「ビースト」 感想 ネコ科・パニックの決定版

概要

原題:BEAST

製作:2022年アメリカ

配給:ユニバーサル・ピクチャーズ

監督:バルタザール・コルマウクル

出演:イドリス・エルバ/シャールト・コプリー/イヤナ・ハーレイ/リア・ジェフリーズ


医師のネイトは娘二人を連れ、亡き妻の出身地である南アフリカへやってきた。現地の友人マーティンと旧交を温めつつ休暇を過ごすつもりだった。だが観光中、何者かに全滅させられた村を発見。そこには人間に対する憎悪を滾らせた魔獣のようなライオンがいたのだった。


予告編

感想





前回に続いて、またしてもアフリカのサバンナへ遊びにやってきた都会者一家がネコ科の猛獣に襲われる作品。…を、劇場で鑑賞してきました。

テーマ的にも特に変わったところはなく、いつもの「密猟者糾弾」「野生動物保護」「家族愛」の3点セットです。



しかし、これは圧倒的に出来が良い!

とにかく人間に対する憎悪を燃やし、殺意の塊と化したライオンの迫力が凄まじい。喰うために襲ってくるのではないためもぐもぐシーンはありませんが、ただただ殺すためだけに襲ってくるのもアリですな。「クルーガー 絶滅危惧種」がめちゃくちゃぬるかったしこれも大して変わらんだろうと油断してたら度肝を抜かれました。



宣伝では何やら「陸のジョーズ」と称されており、うっかりするとポロニアの「丘ジョーズ」の方を連想してしまいますが、実際のところアニマルパニックとしては確かに「ジョーズ」に次いで「ピラニア3D」「クロール 殺戮領域」と肩を並べるくらいの出来だったかもしれません。言いたくないけどアニマルパニックは基本的に9割方駄作なので、このレベルの劇場公開作は数年に一度観られるかどうかなんです。これはテンション上がりますよ。本作はネコ科の猛獣を題材とした作品の中では間違いなく頂点に立った傑作と言えます。(「ロアー」も捨てがたいが)



どうしてそんな殺意に満ちたどうぶつが出現したのか、それはもちろん密猟者が何もかも悪いのであり、どうぶつには何の罪もありません。そんな感じで説教臭くならない程度のメッセージを込めつつ、濃厚なライオン襲撃シーンをみっちり詰め込んでくれている。もはや人間を殺すことしか頭にない殺人モンスターライオンが猛スピードで執拗に飛び掛かってくる。これはアニマルパニック好きにはこたえられぬ美味ですよ。



ただ、襲われる側は主人公ネイトとその娘二人なので、まあ彼らが命を落とすことはないんだろうな…というのは容易に予想がついてしまいます。親子間の亀裂がこの事件を通して修復されるのもありがちだし、ネイトの「絶対に車から出るなよ!」という指示を3回くらい無視する上の娘には若干イラっとします。



「娘たちを守りたい」…ベタベタであまり好みの動機ではありませんが、それでもクライマックスで開き直ったネイトとライオンとの異種格闘戦は実に悲惨で痛々しく、たまらなく美しい。


どうぶつとニンゲンが戯れる映像って、心が癒されるよなあ…。

そんな風に思いました。


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