「ハロウィン KILLS」 感想 かつてない惨劇に震える

概要

原題:Halloween Kills

製作:2021年アメリカ

配給:パルコ

監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン

出演:ジェイミー・リー・カーティス/ジュディ・グリア/アンディ・マティチャック/ウィル・パットン/トーマス・マン/アンソニー・マイケル・ホール/ニック・キャッスル


マイケルを地下に閉じ込めて火を放ち、勝利を確信しながらも重傷を負ったローリーたちは病院へ運ばれていた。だが、何も知らずに駆け付けた消防隊がマイケルを救出してしまう。消防隊を皆殺しにしたマイケルは何事もなかったかのように殺戮を再開。そしてマイケルの恐怖に怯えるハドンフィールド住人たちの自警活動は次第に狂気を帯びてゆく。


予告編

感想





「ハロウィン(2018年)」の続編。

シリーズ作品がいっぱいありすぎてややこしくなってますが、本作については1978年の1作目と2018年版さえ見ておけばOKなやつです。



まず先に言っておくと、これは傑作でした。

私は昔からこのシリーズが大好きで新作は欠かさず観ているのですが、「H20」の時には正直もうマンネリかなあと思ってましたし、「レザレクション」の時にはすっかりオワコン感が漂うほどになっていました。いや、レザレクションも好きですけどね。あれ何回観てもすぐ内容を忘れるんですよね。



そこから2007年のロブ・ゾンビ版リメイクでまた盛り上がったかと思いきや、その続編は捻りすぎてイマイチ微妙になりシリーズがしばらく途絶えることに。ロブ・ゾンビ版2作目も瞬間最大風速だけならシリーズ最高峰なんですけどね。


で、またもや仕切りなおされた2018年版はかなり秀逸な出来ではありました。しかし基本的にスラッシャ―映画のお約束を大きく逸脱することもなく、様式美に染まった上品な口当たりの作品でした。



なので、本作にもそんなに期待はしていなかったんですよね。まあ、いつも通りのハロウィンなんだろうなと。あのテーマ曲とかっこいいマイケル・マイヤーズが観られればそれだけでいいなとすっかり油断してました。コロナで1年も延期したからさすがに2018年版で盛り上がった熱も冷めていたというのもあります。



そんなぬるま湯気分のところにこれほど強烈なものを突き刺してくるとは衝撃でした。スラッシャー映画は基本的に少人数のグループが殺人鬼に襲われるものです。しかし、本作はハドンフィールドの住人みんなが団結してマイケルに立ち向かうという内容。



はじめは「さしものマイケル・マイヤーズもあんないきり立った自警団相手に囲まれたらどうしようもないんじゃないか?」とまたしてもマイケル側を心配していました。私はマイケル大好きなんで基本そっち側に肩入れして観ちゃうんですよね。見た目はジェイソンやフレディやレザーフェイスより大人しくて弱そうだし。1978年版1作目でマスクを外された時の普通の人っぷりが強く印象に残っているのと、ロブ・ゾンビ版の悲劇的なマイケル像が未だに忘れられないというのもある。



ハドンフィールドの住人たちは画面に映るだけでも数十人から100人以上はおり、こんな大規模なスラッシャー映画はちょっと記憶にない。それに伴ってボディカウント数も大幅に増量。間違いなくハロウィン史上最大の大量殺戮です。老若男女善人悪人ポリコレ関係なくただただ無慈悲に無差別に惨殺されていくハドンフィールドの住人たち。だが、1978年版の頃はガキンチョだったトミーやリンジーが住民に結束を呼びかけ、マイケルの凶行を止めようと奔走する。



本作は常軌を逸した邪悪に怯える群集心理の暴走というテーマを取り入れており、一見何やかんや現代アメリカの社会的病巣やら何やらと繋げて深読みできそうな内容。


しかし、そんなことはどうでも良い。



それら全てが衝撃的なラストへのお膳立て。だいたいのスラッシャー映画はバカな人間をいかにムゴイ目に遭わせて楽しむかというものであり、下手に善人を惨殺してしまうとどうにも胸糞悪くなってしまっていけない。「ハロウィン」シリーズはそういう明るいバカさとは基本的に無縁で(H20やレザレクション辺りは怪しかったが)、あくまでシリアスな方向性を維持してきたと思います。しかし前作からの本作でそこを意地悪く突き詰めてきました。


(以下、結末に言及します)




****以下ネタバレ注意****














大抵のスラッシャー映画でもこれまでのハロウィンでもそんなに真面目に人間を描くようなことは滅多になかったんですが、本作はそうでもない。前作で引くぐらいの狂気を滾らせていたイカレババアのローリーは重傷を負っていてほとんど何もできず、今回マイケルのライバルとなる人間側の主人公はその娘カレン。見た目はどこにでもいそうなフツーのおばさんで、一見マイケルにも怯えまくってるが、実はその裏に鋭い牙を隠している。前作では死ぬほどカッコイイ勇姿を魅せてくれました。あれは惚れますよ。そんな彼女が本作では暴走する自警団に狙われた哀れな男を守ろうとたった一人で必死に戦い、娘のピンチに駆け付け一人でマイケルと対峙する。



もうね、スラッシャー映画でここまで魅力的なキャラクターを作れた時点で製作者の勝ちですよ。ローリーやルーミスが主役ではこういう感想にはなりません。カレンが娘を助けに入るくだりではもうこれ以上ないほど濃厚で絶望的な死亡フラグが立っていて、もう心配でたまらない。今回のやたら強いマイケルならなおさらです。だからこそ、そこからの「いただき!」には心底痺れた。これはたまらん。



…そこで終わっていれば、実に清々しい気分で劇場を後に出来たんですがねえ。

しかし、本作は三部作中の二部作目。

まだ後に「ハロウィン Ends」が控えています。



清々しいエンディングになるはずがないと分かってはいたけど、カレンまでもが惨殺される結末はかなりショックでした。いやー本当に胸糞悪いよ。私はローリーがあんまり好きじゃないので、本作が面白かったのはローリーが何もしなかったからというのも結構大きいと思うんですよね。しかしカレンが退場したとなると次回作では嫌でもローリーが主役でマイケルと決着を付けるんだろうし、あんまり期待は持てないかな。

コメント