「バトル・インフェルノ」 感想(ネタバレあり) 地獄の悪魔もバズりたい

概要

原題:The Cleansing Hour
製作:2019年アメリカ
発売:アルバトロス
監督:ダミアン・レヴェック
出演:ライアン・グズマン/カイル・ガルナー/アリックス・アンジェリス/ エマ・ホルツァー/ダニエル・ホフマン・ギル

元神父のマックスは親友のドリューと共に「除霊の時間」という人気番組で荒稼ぎしていた。それはヤラセによるインチキ悪魔祓い儀式を生配信するエンターテイメントだった。だがある時、いつものように生配信を始めると本物の悪魔が降臨し、払われ役のスタッフに憑りついてしまう。悪魔はマックスたちを脅し、痛めつけ、懺悔を求めてくるが…

予告編



感想





近年の心霊や悪魔系のホラー映画を観ていると、霊とか悪魔がスマホやインターネット、SNSといったハイテクツールの使い方を熟知していることが多く、シリアスなホラーであればあるほど「いつ勉強したんだよ…」と興醒めしてくることがあります。どれだけ恐ろし気な悪霊や悪魔でもチマチマとスマホのお勉強をしている光景を想像するとお笑いにしかなりませんからね。

本作はヤラセの悪魔祓い儀式に本物の悪魔が降臨し、生配信であることを積極的に活用して悪だくみを行う…ということでその手のホラーの中でも極北に位置する作品と言えるでしょう。インチキ撮影なのに本物が来てしまった!というホラー映画は腐るほどあります。しかし、ここまで徹底的にやってくれると他よりインパクトがあって面白い。地獄の悪魔も人間界で活動するためにはSNSでいかにバズるかを研究せねばならない時代がきたようです。


しかしなぜ悪魔がそんなことを?という疑問についてはオチに関わってくるのですが、その理由付けはありきたりながらも感心しました。バズりたいなどという俗っぽい目的を持って生配信に降臨してくる地獄の悪魔というのはかなり斬新です。いかに視聴者を引き付けるか、ファボらせるかに心を砕く悪魔。下らなくも面白い。

普通の悪魔が人間に憑りつく場合、せいぜい周囲の人間に緑色のゲロを噴射したり、スパイダーウォークを見せつけて神への信仰を失わせるぐらいのことしかできません。いや、それでも充分脅威かもしれませんが。しかし、それを生配信することで対象が周囲の人間から世界中の人間に広げることが出来る。人類はなんと恐ろしい拡散ツールを発明してしまったのか。

しかも、番組をより拡散したいという意味ではエセ神父たちと悪魔との利害が実は一致していたとも言えるのです。マックスとドリューは悪魔にスタッフを殺されまくり、隠しておきたい悪事を残らず懺悔させられ、肉体的にもメタメタに痛めつけられるというひどい目に遭わされます。が、それによって視聴者数はうなぎ登り。バズるだけバズって目的を達成した悪魔が去った後、SNSのフォロワーがウン百万人も増加しているのを見たエセ神父は思わずニッコリ。なんという皮肉。現代人がいかにSNSに毒されてるかを表してるとでもいうのか。これではまるでフォロワーを増やすために悪魔と取引したみたいです。それにしてもあれほどのダメージを受けてなお笑うことが出来るとは…


ところでどうでもいいけどこれ、せっかく良作なのになんでこんなやる気のない邦題なんでしょうかね。言うほどバトってるわけでもないし。
例えば私が2秒で考えた邦題ですが
「エクソシズム・ライブ 除霊の時間」
とかの方がよっぽどましだと思うんですが。


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