「透明人間(2020)」 感想 プレデターを超える光学迷彩の恐怖

概要

原題:The Invisible Man
製作:2020年アメリカ
配給:東宝東和
監督:リー・ワネル
出演:エリザベス・モス/オルディス・ホッジ/ストーム・リード/オリヴァー・ジャクソン=コーエン/ハリエット・ダイアー

セシリアは光学研究者である夫エイドリアンの異常な支配・束縛に苦しめられていたが、ある夜逃げ出すことに成功する。友人の家に潜み夫の影に怯えて過ごしていたセシリアだったが、ほどなくしてエイドリアンが自殺したとの知らせが入る。これで安心して暮らせると思われたが、彼女の周囲で怪奇現象が起こり始める。自殺を偽装した夫の仕業だと確信するが、誰もセシリアを信じず彼女は孤立してゆくのだった。

予告編




感想

1934年の「透明人間」のリブート。と言われても古すぎて観たことないし、いくら「アップグレード」のリー・ワネル監督作とはいえ今更こんなクラシックな題材で面白い映画になるんだろうかと思いながら観てきました。



光学研究の第一人者であるDV夫から逃げてきたセシリア。夫はその後自殺してしまうが、セシリアの周囲では怪奇現象が頻発する。夫は死を偽装し、光学迷彩スーツを着て彼女をストーキングしていたのだ…という話。

透明人間といえばなんかのクスリで体が透き通っていくイメージがありますが、本作では超高性能の光学迷彩スーツ。光学迷彩と言えば「プレデター」ですが、21世紀の人類はプレデターの科学力を上回ってしまったようです。なんと揺らめく影すら全く見えない完璧な透明人間と化すことができるのです。これが意外にも実に恐ろしい。

よくホラー映画通なんかが「一番恐ろしいのは幽霊や怪物ではなく生きている人間だ」みたいなことをのたまったりしますが、これは個人的には嫌いな言葉でして、やっぱりそれでもホラー映画の中では幽霊や怪物の方が恐ろしい存在であってほしいと思ってるんですよね。

が、本作の透明人間の場合、幽霊と人間の美味しいとこ取りになっています。天才DV夫エイドリアンは自分の死を偽装しているので社会的には死んでいることになっており、かつ姿が全く視認できない。限りなく幽霊に近い存在と化しています。それでいて中身はこれ以上ないほど異常なサイコストーカー野郎で、セシリアに対しとんでもなく陰湿な嫌がらせをこれでもかと仕掛けてくる。サイコ野郎と幽霊の恐ろしさを掛け合わせた脅威のモンスターになっています。

ただ、光学迷彩があまりにも高性能すぎて何も見えないので、これ実は精神を病んだセシリアの妄想なのでは…という感触もあるのですが、その分初めて透明人間の存在が明らかになるシーンの驚きと恐怖感は相当なインパクトでした。怪しいところにペンキをぶっかけてみるという一歩間違えれば使い古されたお笑いになってしまうようなやり方であれほどの恐怖を演出できるのが本当に凄い。何もないところを映し続けるカメラワークや煽り効果の高すぎる音楽、セシリア役の人の迫真すぎる演技によって観客の精神を完全に掌握していると言っても過言ではない。何も見えないだけに「次は一体何を仕掛けてくるんだ」という緊張感が一切途切れることがなく、2時間越えの長尺もあっという間に感じました。

ところでこれ、劇場に私一人しかいない貸し切り状態だったんですがもしかして不入りだったりするんですかね。さすがにこのクオリティで不入りは悲しすぎるので、興味を持った人はぜひ劇場で鑑賞してみてください。

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