「アクアスラッシュ」 感想 スラッシャー映画の新しい可能性

概要

原題:AQUASLASH
製作:2019年カナダ
発売:アクセスエー
監督:レナウド・ゴルティエ
出演:ニコラス・フォンテーヌ/ブリタニー・ドリスデル/マドリーヌ・ハーヴェイ/ポール・ジンノ/ラニサ・ドーン/ニック・ウォーカー

高校卒業パーティで賑わうキャンプ地・ウェットバレー。パーティのクライマックスは、賞金のかかったスライダータイムレース。だが、そのウォータースライダーには恐ろしい罠が仕掛けられていた…。

予告編




感想





ウォータースライダーの中に刃物を仕掛けたらどうなってしまうのか? という、誰もが考え付きそうで考え付かなかったコロンブスの卵的アイデアを実現した意欲的なスラッシャー映画。



尺は1時間ちょっとしかなく、クライマックスだけに全身全霊を捧げた一点集中型の作りで前置きの人間ドラマは限りなく無意味。主人公は何もしない、殺人鬼もウォータースライダーに刃物を設置しただけで他にはほとんど何もしない、と異常なほど潔いです。色々と「ピラニア3D」に似た雰囲気ですが、あれよりもさらにシンプル。もはや人間ドラマどころか主人公の存在自体が無意味。

とはいえその無意味な前置き50分間もそこまでつらいということはなく、何となく暇つぶしに眺めていられる程度のクオリティであるのは助かる。まあ、飛ばしたところで何の問題もありませんが。ラスト10分だけ観れば充分な映画です。パリピの乱痴気騒ぎが意外と大人しいなと思ったら本作はアメリカ製ではなくカナダ製でした。

知能指数の低そうな若者たちが地獄のウォータースライダーに飛び込んではブツ切り肉と化していく「その瞬間」を魅せるためだけに作られた映画であり、そこに期待して借りた人、ジャケを見て借りた人の欲求をこれ以上ないほどストレートなスプラッター表現で満たしてくれます。珍しくジャケ詐欺要素が皆無という点も好感度が高い。


スラッシャー映画としての切れ味はこの上なく鋭いのですが、劇中の刃物はそこまで鋭利というわけではなく、だんだん人が詰まって切れなくなってくる。妙なところでリアルです。しかし後ろからさらに滑ってくる人間とぶつかった衝撃で詰まりが解消される。そのたびに下のプールはブツ切り肉だらけの血の池地獄と化していく。これは非常にユニークな絵面です。「ワナオトコ」や「ファイナル・デスティネーション」シリーズなどとはまた違った見せ方。いたく感心させられると同時に、スラッシャー映画にはまだまだ未知の可能性があるのだなと希望を持たせてくれる良作でした。これはレンタル店で高回転間違いなしでしょう。本作はたった一つのスライダーに刃物が仕掛けられただけなので小規模な殺戮に留まりましたが、スケールアップした続編や別の遊具や競技をネタにした類似作の登場に期待したいと思います。

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