「海底47m 古代マヤの死の迷宮」 感想 サメはいいぞ

概要

原題:47 Meters Down: Uncaged
製作:2019年イギリス・アメリカ
配給:ギャガ
監督:ヨハネス・ロバーツ
出演:ソフィー・ネリッセ/コリーヌ・フォックス/ブリアンヌ・チュー/システィーン・スタローン/ダヴィ・サントス/カイリン・ランボ/ブレック・バッシンジャー/ジョン・コーベット/ニア・ロング

ミアとサーシャの姉妹は週末にサメ鑑賞ツアーへ参加しようとするが、途中で出くわした友人たちと共に海中に沈む古代マヤ遺跡を目指すダイビングへ行くことに。神秘的な遺跡に夢中になる彼女たちだったが、突如獰猛な盲目のサメに襲われ洞窟が崩れて帰れなくなってしまう。

予告編



感想


まさかあの名作サメ映画「海底47m」の続編が作られるとは思いませんでした。まあ話に関連性はないし、今回は別に47mでも何でもないしで続編を名乗る意味はちょっと分かりませんが。とにかく前作は本当に素晴らしいサメ映画で、「サメ映画オールタイムベスト」ランキングを作ったならば確実に5位以内には入るぐらいの名作でした。真に貴重な「クソじゃないサメ映画」の一本です。



で、前作はシャークケージダイビングでケージが海底に落っこちてしまう話でしたが、本作は海に沈んだ古代マヤの迷宮が舞台ということで何だか子供向けアドベンチャー映画のような雰囲気がなくもない。タイトルからサメの気配が感じられない。これはあわよくば夏休みの子供たち、家族連れを釣ってやろうという意図でもあるのでしょうか? それでサメ映画ファンの裾野を広げることにつながるのなら素晴らしいなと思います。


本作は海中の古代マヤ遺跡に閉じ込められた4人の女子高生が盲目のサメに追われながら脱出しようとする話です。これは女たちが地下洞窟に閉じ込められて目の退化した地底人と戦う「ディセント」だとか、盲目の軍人から逃げる「ドント・ブリーズ」など過去の名作に通じるものが感じられます。ちょっとでも油断するとなぜかすぐにクソサメ映画化してしまう呪われたサメ映画業界ですが、これだけおいしいとこ取りしているのなら面白くないはずがない。果たして期待通り、海中遺跡という閉鎖空間の息苦しさとサメがいきなり襲ってくる恐怖感がほどよく組み合わさることで本作も滅多にお目にかかることができない「本当に怖いサメ映画」になっています。


監督のヨハネス・ロバーツは「ストレージ24」だの「ストレンジャーズ 地獄からの訪問者」だのと悪くはないけど味気なくて微妙なホラー映画ばかり撮ってるのになぜかこのシリーズでは傑作を連発するんだからよっぽどサメと相性がいい人物なんでしょうね。本作には「ディープ・ブルー」オマージュなシーンもあり、サメ映画への愛を感じられます。彼には今後も「海底47m」シリーズにこだわらずとにかくサメの出てくる映画を撮りまくっていただきたいものです。


…ただ、それでも私は前作の方が圧倒的に上だと思うんですよね。前作は完全に開けた海中が舞台だったわけで、前後左右上下360度どこからでも何匹でもサメが襲ってくる環境が途方もなく恐ろしく、それが何より素晴らしかった。そこへいくと本作は狭苦しい海中遺跡が舞台ですから、例えば狭い通路なんかにいる時はサメが入ってくることもないわけで、そこで緊張感が途切れてしまうんです。閉塞感が逆に安全地帯というアダになってしまった。この点に関しては閉所恐怖症の方やダイビング経験のある方はまた違った感想を持つとは思いますが。

また、遺跡に住み着いた盲目のサメがメインの敵ってことで出てくるサメの数自体も少なく、物足りなさは否めない。盲目だから特別どうというサメでもなかったし。ただしクライマックスではこの閉塞感とサメ不足が一気に解消されて見ごたえありまくりのサメバトルを拝めるのは素晴らしいです。サメのいる海で泳ぐことの恐ろしさを存分に味わえます。


前作よりは落ちるとはいえ、クソじゃないサメ映画の層にまた少し厚みを持たせてくれた本作には感謝の念しかありません。どうでもいいけど本作にはシルベスター・スタローンやジェイミー・フォックスの娘たちが出てるんですよね。偉大な親のコネを使ってまでサメ映画に出ようとするなんてどうかしてますよ。でもサメ映画の地位が上がりつつあるのは確かなようです。『まともなサメ映画なんて「ジョーズ」と「ディープ・ブルー」しかないんだよ…』と言うしかなかった、あの長かった暗黒時代が既に懐かしい。サメ映画ファンにはわざわざ勧めるまでもないとしても、少しでも本作に興味のある人は迷わず劇場へ走るべきだと言っておきます。

コメント