「バッド・マイロ!」 感想 大腸ポリープと絆を深める物語

概要

原題:Bad milo!
製作:2013年アメリカ
発売:カルチュア・パブリッシャーズ
監督: ジェイコブ・ヴォーン
出演: ケン・マリーノ/ジリアン・ジェイコブス/ピーター・ストーメア/パトリック・ウォーバートン/メアリー・ケイ・プレイス

ある日突然、同僚にクビを言い渡すリストラ担当にされてしまった会計士のダンカン。しかも人事部のオフィスはトイレであった。お節介な母親と若すぎる継父など、ダンカンの悩みとストレスがピークに達した時、それは腹痛と共にケツから現れる…。


予告編



感想




ストレスを溜め込みすぎたサラリーマンの尻からグレムリン…いや、ポケモン的なプリティクリーチャーが噴出してくるお下劣スプラッターコメディ。コロナ疲れでストレス満載な今こそ可能な限り下らない映画で乾き切った心を潤したい。そんな欲求にこれ以上ないほど応えてくれる突き抜けたバカ映画でした。

今日も会社で嫌なことがあった…
ああ、あのクソ野郎ぶっ殺してやりてえなあ…

という欲求を持たないサラリーマンがこの世にいるでしょうか?
いや、いない!

法治国家と資本主義社会の形成において暴力と殺人が禁忌となったため、かつてのような直接的な闘争は確かに無くなりました。しかしそのかわりに、企業戦士はカネを得るために容赦のないメンタルの削り合いを強いられる。表向きは平和な世の中になりましたが、サラリーマンの精神世界では常に陰鬱で凄惨極まりない地獄のような闘争が繰り広げられているのです。

その結果、大腸にポリープが出来てしまう。
非常に良くあることです。名誉の負傷と言ってもいい。

大体、どの病気について調べても、
「ストレスも原因の一つ」
「ストレスをためないようにしましょう」
などという対処法が書かれているのですが、そんなことできるもんならやっとるわ!不可能だろ!
と余計ストレスをためてしまいがちです。そして肛門からカメラを入れること自体も猛烈にストレスが大きい。こうして人はストレスの螺旋にはまり込んでいくのです。

しかし、そんな厄介な大腸ポリープが実は「肛門の神話」の産物だったらどうでしょうか。少しは楽しくなってくるのではないか。

本作の主人公ダンカンの肛門から出てくるマイロ君は、ダンカンのストレス源となる人物を抹殺するために生まれた存在です。これはなんと素晴らしい大腸ポリープなのか。健康診断でポリープが見つかったら嫌な気分になりますが、もしかしたら嫌な奴を片付けてくれる神話的ポリープなのかもしれない。そう思えば苦しい大腸内視鏡も何だか楽しみになってくるというもの。

しかもこのマイロ君、一見グロ系モンスターのようですが実は仕草といい声といいつぶらな瞳といい、あざといぐらい可愛いです。とても尻から出てきたとは思えない愛くるしさ。そのうえ嫌な奴を始末してくれる。うまく制御することさえ出来ればメリットしかない存在。ただ、そのためには絆を深める必要がある。
尻から噴出したモノと絆を深める。
なんと感動的な物語なのか。
マイロにはデメリットが何一つ存在しないのではないか?
これはもうグッド・マイロじゃないのか?
一体彼の何がバッドだというのか?


と思ったら、一つだけデメリットがありました。
それは出し入れがめちゃくちゃ大変だということ。
嫌な奴を始末したいのはやまやまだが、アライグマサイズのクリーチャーが毎回肛門から出入りするとなるとお断りせざるを得ない。出すだけならまだしも、入れるのはちょっとなあ。願望を満たすためには極めて大きな代償を払う必要もある。そんな教訓も得ることのできる、示唆に富んだ深い映画でした。




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