「アサシネーション・ネーション」 感想 人はなぜSNSに隠し事をアップしたがるのか

概要

原題:Assassination Nation
製作:2018年アメリカ
発売:アマゾンプライムビデオ配信
監督:サム・レヴィンソン
出演:オデッサ・ヤング/スーキー・ウォーターハウス/ハリ・ネフ

マサチューセッツ州セイラムで、友人たちとSNS漬けの生活を送っていた高校生のリリー。ある日、市長のスキャンダル動画が出回り始めたのを皮切りにセイラムの住人たちのプライバシーが次々と流出。町は大混乱に陥る。犯人と疑われたリリーは暴徒と化した住人たちに追われることに。

予告編





感想

Z級映画ばかり続けて観るのも健康に良くないので、今日はちゃんとそれなりの製作費をかけて作られていそうな映画を鑑賞しました。


ネット社会では人は正義の名のもとに簡単に暴徒と化す。というSNS依存への警鐘をスタイリッシュに描いた風刺映画。私はSNSなぞやっておらずインスタとフェイスブックの違いも分からんような時代に取り残された人間なので正直理解し難いところまみれでした。この映画の発するメッセージ自体は大変ストレートだと思いますが、自分がその対象では無かったという疎外感。やっぱりツイッターぐらいやってみるべきかな。でもブログで手一杯なんだよな。


まずこの映画のアメリカ人は自分の致命的な痴態をSNSにアップしすぎなのではないでしょうか。リアルアメリカ人もあんなことしてんの? 最初の犠牲者は女装趣味を晒されてしまい、その釈明会見中に自殺するほど追いつめられてしまった市長です。が、それほど秘密にしておきたい動画をSNS上に置いておけるメンタリティがよく分からない。今ならディープフェイクだと言い張ればごまかせる気もします。それで、市長以外の一般人のセルフセクシャルハラスメント的なプライバシー動画が次々と流出となっていくわけですが、そもそもそんなもんをいちいち撮影すんなよと突っ込みたい。


とはいえ私もこのブログで毎日のようにZ級映画を観ては興奮しているという、ある意味特殊な性癖をわざわざ公開していると言えなくもない。もしこれが現実社会で白日の下に晒されてしまったら、私も厳しい社会的制裁とかリンチは免れ得ないかもしれません。


そう考えると人は誰しも隠しておきたい特殊な性癖やら痴態やらを、実は人に見てもらいたいという矛盾した欲望も抱えていると言えます。しかし他人のそれを見つけたら正義の鉄槌を下したいという真逆の欲望とセットになっている。なんと救いがたい、ねじれた醜い欲求なのか。SNSの普及によってそんな人間の新たな一面が現れつつある。


本作はそんな人間の二面性の全てが流出してしまったら、人は互いの暗部をつつき合いながら炎上をエスカレートさせていくしかないのだという人間の愚かな破滅願望を見事にえぐり出してくれたのではないでしょうか。SNSやってないから知らんけど。


他にも性差別とか魔女狩りとかありますが、そういうメッセージ的なことは置いておいてもっと即物的な話をすると、マンガチックに武装した女の子たちや過激なバイオレンス描写のノリにすごくタランティーノ臭さを感じました。派手な銃撃戦とか過剰な血糊とか色々とサービス精神旺盛なのでぼんやり眺めているだけでもそこそこ楽しめるでしょう。プライム会員なら鑑賞してみても損は無いかなと思います。

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