「モンスター・フェスティバル」 感想(ネタバレあり) ホラー映画を好む変人は粛清されるべきか?

概要

原題:Blood Fest
製作:2018年アメリカ
発売:ニューセレクト
監督:オーウェン・エガートン
出演:ロビー・ケイ/セイチェル・ガブリエル/ ジェイコブ・バタロン/バーバラ・ダンケルマン/ザカリー・リーヴァイ

ホラー映画おたくのダックスは、ハロウィンの夜に開催される大規模なホラーイベント「流血の祭」に友人と共に参加する。しかし、オープニングで現れた仮面の男が観客を本当に切り刻んでしまう。さらに豚マスクたちが一斉にチェーンソーで観客に襲い掛かり、リアルな流血の祭が幕を開ける。


予告編



感想


ホラーイベントに参加したら殺人鬼キャラが本当に襲ってきたので、主人公はホラー映画の法則を駆使して生き延びようとする…っていう、「キャビン」とよく似た構造のメタホラーでした。ただ「キャビン」ほどのホラー映画愛は感じられず、なんだか表面的なパロディに終始していたような印象。

また、ただのイベントではなく本当に襲われる話のわりにダックスたちに危機感があまりなくて、むしろ楽しんじゃってる雰囲気が感じられるのも困った。コメディと言ってもそれは何か違う。「キャビン」の主人公たちは用意されたホラーの箱庭の中で真剣に生き残ろうとしていたからこそのメタホラーだったわけで、本作のような軽いノリだとダックスたちがお化け屋敷で騒いでいるだけなのとそう変わらないように見えてしまうんですよね。


邦題もこれは下手にいじらずに「ブラッド・フェスティバル」のままにして欲しかったところですね。世界初のスプラッター映画「血の祝祭日」をリスペクトした名前だったんだし。言うほどモンスターっぽい奴は出てきませんからね。ゾンビと吸血鬼ぐらいで。しかし主催者の「ホラーは死んだ!吸血鬼は生気にあふれ、ゾンビはメロドラマの主役だ!」というセリフには笑わせて頂きました。まさにそういうゾンビ映画観たばかりなので。


そのフェス開幕で豚マスクたちがチェーンソーで観客のホラーマニア共をぶった切るシーンはなかなかの盛り上がりです。あの豚マスクは「地獄のモーテル」ネタなんですかね。最近「ハロウィン」や「チャイルドプレイ」など古いホラー映画のリブート版が製作されることが多いですが、「地獄のモーテル」は一体いつリブートしてもらえるんでしょうか? と思ったけど今の時代に人間栽培は無理があるか…


「地獄のモーテル」も今となっては少しだけマニアックですが、さらに本作には「セル」(キング原作の方)のパロディと思しきネタも存在します。あんなもんパロっても誰も喜ばないだろうと思うんですが。あと「樹木医」とかいう本作オリジナルの殺人鬼がメインとなっている点も合わせると、どうも中盤以降は淡泊というか微妙に外している感が否めないかなと。


むしろマニア的にはそれよりも「なぜホラー映画を観るの?」という根源的な問い掛けの方が気になりました。と言ってもそんなの「楽しいから」としか答えようがないんですが、ブラッドフェスティバルの主催者はそういう「血と暴力を好む変人共」を一網打尽にしたかったっていう話で、だからこそやはりダックスは「血と暴力ほど素晴らしいエンタメは無いだろうが!」と全力で全肯定してくれても良かったのではないのかと。


ということで色々文句も言いましたが、B級ホラーマニア的にはそれでもまあまあ楽しめました。どうせ荒唐無稽な話なんだから軽いノリにするのもまあアリかなという感じです。もっとコメディに寄せても良かった気はしますが。

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