「マッドネス 闇に潜む者」 感想 廃墟に巣食うヤバい奴

概要


原題:Derelict
製作:2016年オーストラリア
発売:配信のみ
監督:クリス・ブロードハースト/ジェームス・ブロードハースト
出演:トリスタン・バルズ/ジェームス・ブロードハースト/クリストファー・サンソニ

有名ブロガー推薦の廃発電所へ遊びにやってきた廃墟マニアの男3人組。落書きだらけの荒廃した発電所内を堪能していると、地下への階段を発見する。異様な雰囲気に尻込みしつつ降りてみると、ガスマスクをつけた怪人と遭遇。慌てて逃げ出した3人は迷宮と化した地下通路で出口を見失ってしまうのだった。

予告編



感想


また得体の知れない超低予算のオーストラリア製ホラーが配信されていたので、かなりの地雷臭に尻込みしつつ恐る恐るレンタルしてみました。




もっと安心して楽しめるメジャーな映画を観ればいいのに…とはよく言われますが、確かにその通りです。こんな訳の分からん映画に金と時間を浪費して、さらにクソだブルシットだとブログに書き殴るなど、肥溜めに顔を突っ込んで「臭え!」と叫んでいるのとあまり変わらない気もします。


しかし、本作は廃墟探索を主題としたホラーなのですが、これを観て気が付きました。私が得体の知れない映画を漁るのも、廃墟探索と同じような趣味嗜好なのだと。遊園地のアトラクションの「保証された楽しさ」も決して嫌いなわけではないが、それよりも何が飛び出すのか分からない天然の廃墟にこそ真のエンターテインメントがある。外食する時も、画一化されたチェーン店より怪しげな個人経営店に入った方が、たとえ不味くても楽しめるものです。


そんな人間にとって、本作は最高のアタリ作品でした。
こんな得体の知れない、DVD化もなしでこっそり配信されているうさんくさい映画の中では珍しいほど面白い。100点満点中15点ぐらいを覚悟してたら55点も取れてた!ぐらいの喜びです。


本作がポロニア・ブラザーズ・エンターテインメントレベルに金をかけてない映画なのはすぐにわかります。スタッフも出演者もごく少人数だし、映像的にも本物の廃墟内をうろついているだけなのでどこにも金の匂いがしない。しかも廃墟を探索する男3人組はなぜか初めから結構険悪な仲で常にギスギス、喧嘩ばかりしており無駄にゲンナリさせられます。なんでそんなに仲が悪いくせに一緒に廃墟なんて行ってるのか分からん。


しかし、舞台となる廃発電所は本物の廃墟だけあって素のままでも非常に危険なムードが漂っています。廃墟マニアはこれだけでも本作を観る価値があるんじゃないでしょうか。

そこに現れるガスマスクのヤバい奴は、実際そこまでヤバい奴でもなく、私でも倒せそうな貧弱な奴です。これが非常に惜しい。もしコイツがドイツの廃墟探索ホラー「アーバンエクスプローラー」のようなトラウマ級のゴア描写をやらかしてくれる本物のヤバい奴だったら、もっと素晴らしい作品になったのではないかと思うんですが。


ただ、本作は廃墟内でヤバい奴に追われるだけの退屈なホラーではなく、先行してやってきたブロガーの本当の目的や、それを追ってきたアンドレという男の思惑、廃棄された工業薬品の謎など、微妙に美味そうな撒き餌を散らしてこちらの興味を惹きつけてくれます。これがリアルな廃墟の地下迷宮と絡むと、なかなかいいお味に。

まあ結局はどうってことない話なんですが、1時間17分のホラーとしてはそれくらいの味付けで必要充分なんです。その辺のC級ホラーのように何のひねりもないのとは格段の差があります。

ヤバい奴が追ってくる時の劇伴や照明の演出もなかなか凝っていて監督の才能を感じさせます。というか製作・監督・脚本・出演・撮影とほとんど全部兄弟で兼任しているようですが。そんな超低予算映画ながらもストーリー、映像、音楽と独自性が光っており、観る価値はあると言えるでしょう。とはいえ万人受けするとはとても思えないので気軽にオススメも出来ませんが、たまには何か変わったものが観たいと言う人は200円をドブに捨てたつもりで鑑賞するのも悪くないのではないでしょうか。







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