「マッド・ハイジ」 感想 乳糖不耐症はスイス国民にあらず

概要

原題:Mad Heidi

製作:2022年スイス

配給:ハーク

監督:ヨハネス・ハートマン/サンドロ・クロプフシュタイン

出演:アリス・ルーシー/デヴィッド・スコフィールド/キャスパー・ヴァン・ディーン/アルマル・G・佐藤


チーズメーカーの社長でありスイス大統領でもあるマイリは、国内のチーズ業界を牛耳り自社以外の製品を厳しく取り締まっていた。アルプスの山で暮らしていたハイジは恋人のペーターや祖父と穏やかに暮らしていたが、ある時ペーターが闇チーズを売りさばいた罪で処刑され、ついでに祖父までもが爆殺されてしまう。強制収容所に入れられたハイジは独裁者マイリへの復讐を誓い、密かに牙を研ぐ。


予告編

感想





誰でも知ってる児童文学を元ネタにしたスイス初?のエクスプロイテーション映画。

スイス映画ってあまり観たことない気がします。直近でも「スイス・アーミー・マン」くらいかな。変な映画多いのかな。



これは当然商業映画ではなく、独特の自主製作臭が漂っていながらやけにリッチな画面で少し戸惑いました。クラファンで3億円も集まったせいなんでしょうね。3億円の自主製作映画なんて観たことないかも。さすが超メジャー児童文学+アニメの集金力は並ではない。



しかし内容は「プー あくまのくまさん」みたいな下劣な原作冒涜系スプラッターかな…と思ってたら意外と王道的なストーリーで驚きました。いや、下品で冒涜的には違いないかもしれないけど。愛する人たちを悪の独裁者に殺され、厳しい修業の末に力を身に着け、闘技会に参加し仇を討つ。王道というか昔からよくある話をなぞってる感はあり。例えば最近だと「アフリカン・カンフー・ナチス」とほとんど同じ。



私は元ネタの本もアニメも全然知らなくて、せいぜい昔よくやってた「日本のアニメ名場面ランキング」みたいな番組でクララが立つシーンを見たことがある程度です。ただ毎回必ず上位に入ってたんでそこだけ10回以上は見せられた気がします。他に何をしているアニメなのかは全く知りません。



が、おそらく本作は原作とはほとんど何の関連性もない、というか多分集金するために名前を借りただけのふざけたスイス映画と見て間違いないのではないかと考えられます。



チーズ会社の社長が独裁政治を敷き、闇チーズが取り締まられ、乳糖不耐症の国民は粛清される世界。このくだらなさはやはりアフリカン・カンフー・ナチスのスイス版といった趣きでちょっと楽しい。食べた者をゾンビアーミー化させる毒チーズを開発してご満悦の社長兼大統領のマイリ役が何気にキャスパー・ヴァン・ディーンでビックリです。「シャークトパスVS狼鯨」以来久しぶりに見たから最初分からなかった。まさかB級映画を通り越してスイスの自主製作映画にまで出ているとは…



アクションに関してはハイジ役の人がとても華奢な女性なので仕方ないとはいえ普通にショボい。そこだけはアフカンナチスが凄かっただけに物足りなさは否めない。とはいえ、頭が破裂したり体に穴が空いたりといったスプラッターは気合が入っていて好感触だし、何よりこんな珍妙なスイス的世界観は本作でしか味わえない。ということで自主製作としては充分すぎるほど楽しめる作品でした。


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