「イノセンツ」 感想 痛みがわからない

概要

原題:De uskyldige

製作:2023年ノルウェー・スウェーデン・フィンランド・フランス・イギリス

配給:ロングライド

監督:エスキル・フォクト

出演:ラーケル・レノーラ・フレットゥム/アルヴァ・ブリンスモ・ラームスタ/ミナ・ヤスミン・ブレムセット・アシェイム/サム・アシュラフ/エレン・ドリト・ピーターセン


ノルウェー郊外のある団地へ越してきた家族。自閉症の姉を持つ9歳の少女イーダは、そこで超能力を持つ少年ベンと知り合う。遊びでいろんなことを試すうち、彼らの超能力はどんどん育っていくが、やがて決裂することになる。


予告編

感想





もうそろそろ空いてるだろと思って劇場へ行ってきましたが、思ったよりかなり混んでて疲れました。こっちではもう1日1回しか上映してないからか…。



内容は、北欧の団地で繰り広げられるお子様4名によるサイキックバトル超決戦。

こう書くといつものような荒唐無稽な馬鹿映画のように聞こえますが、本作は全然違う。頭から最後の最後までとんでもなく不穏な空気に満ち満ちており、緊張の糸が117分間ずっと張り詰めまくっている恐ろしい作品です。



まず、主人公イーダが9歳の女の子のくせにやたら怖い。虫を遊び半分に殺して楽しんだり、自閉症の姉アナの靴にガラス片を入れたりするから怖い。それに何より眉毛が無いお顔がすごく冷たくて怖いんですよ。もし私があの子に見つめられたら万札を出して赦しを乞うてしまうかもしれません。そしてそんな紙屑いらないからクローネにしてこいと足蹴にされることでしょう。



超能力少年ベン君も途方もなく怖い。確かにトンボの羽から体を引きちぎってシーチキンとか言ったり、バッタの腹をじわじわ握り潰して醤油バッタとか言って遊んだりする子供は珍しくない。けど、猫に対してあんなことする子供はさすがにシリアルキラー予備軍と言わざるを得ない。愛猫家は決して観てはいけない残酷映画と言えます。「隣の影」のアレも未だに忘れてませんけど、北欧の映画ってほんと動物に厳しいというか容赦ないですよね。動物だけでもないか。



まあそれでもベン君には気の毒な事情も垣間見えるし、喜怒哀楽をわりと出してくれる分イーダほど怖くはないかもしれません。いや、イーダもアナの面倒を見なければいけないのが相当気の毒ではあります。あともう一人そこに加わるアイシャという少女もですが、劣悪な環境で暮らす子供たちの鬱屈した人間模様だけでも相当に不穏です。幾層もの不穏でコーティングされていると言ってもいいほど不穏オブ不穏すぎるのです。「何かやべえことが起きそう」という予感が常にしてしまうし、実際たびたび起こるからたまらない。



そんな子供たちが手に入れてしまった強力な超能力でケンカしてしまったらどうなるのか。描写自体はかなり抑え気味ではあるものの…いや、静かなムードだからこその想像以上に冷酷非情で容赦ない殺し合いになっていてビックリです。なんだあの子らの生まれながらの殺し屋みたいなメンタルは。忍者同士の戦いか念能力バトルかなと思うほどの計算高さもスゴイ。そこに絶妙に純粋な子供らしさも混ぜ込んできてるので作戦が読めず予想外の展開になり、印象に残ります。決着してもエンドロールが始まる瞬間まで安心できる時が全く無いし、本当に「子供って怖い」と思わせる素晴らしい作品でした。いや、根本的には全部大人が悪いんだけども。



コメント