概要
製作:2025年日本
配給:東宝
監督:李相日
出演:吉沢亮/横浜流星/高畑充希/寺島しのぶ/森七菜/三浦貴大/渡辺謙
ヤクザの息子が歌舞伎の世界に入り、のし上がっていく。
予告編
感想
私は基本的に邦画が好きじゃないし、歌舞伎には何の興味も関心もありません。出演者は渡辺謙以外誰も分からない。しかも映画の尺は80~90分がベストだと思っているので、174分もあると聞いただけで胸焼けしてしまう。普段なら絶対に観に行かないタイプの映画です。観る資格が無いと言ってもいい。
何せ普段はその辺の石をひっくり返してはダンゴムシとかヤスデをそのまま口に放り込むような食生活を送っているので、いきなりこんな高級懐石など振舞われてもその価値が分かるはずがないんです。どう考えても、マーク・ポロニアの来日イベントに参加できなくて歯ぎしりをしているような人間が観ていい作品とは思えない。
…なんですが、足の不自由な老母が「どうしても観たいので連れてってくれ」と頼むので仕方なく付き添いで観てきました。
まあしかし公開から1か月以上経つのに未だにやたら混んでますよね。みんなそんなに歌舞伎に興味があるもんだとは知らなんだ。っていうくらい、歌舞伎の場面が大半を占めている作品でした。人間ドラマ的には実に王道な感じで題材が歌舞伎であろうと盆踊りであろうと楽しめるところはあり、それは良かったんですが、それでもやっぱり初めの2時間くらいはちょっと退屈でした。
いや、私があまりにも歌舞伎のことを知らなさすぎるのでもはや外国人と同じ目線になってたんですよね。歌舞伎の演目が入るたびに、私の中の米国入道が
「Oh…」
「Très bien」
みたいな反応をしていました。けどやっぱりあれだけの量が入ってくると、それだけじゃつらくなってくる。リメイク版サスペリアの暗黒コンテンポラリーダンスを眺めていた時の気分に近いものがありました。
ただ本作、主人公の師匠とその息子が糖尿病を患っており、それでも芸の道を究めようとするあまり舞台上で色々とえらいことになります。そのせいで歌舞伎の場面でも死ぬかもしれないという緊張感が漂っており、そうなってくるとさすがの私でも少しは引き込まれます。クライマックスはもうサブスタンスみたいな惨劇でも起きるんじゃないかと想像してしまうくらい鬼気迫るものを感じました。これなら興味ない映画でも観に来た甲斐はあったかなと思います。
私の身近にノホホンと乱れた食生活を送っている糖尿病患者が複数いるので、つい「糖尿病なんて大した病気じゃない」と考えてしまいがちなんですが、本作は糖尿病をなめてはいけないと啓蒙してくれる映画でもありましたね。血筋がテーマのひとつとなる中で、その血筋も良い事ばかりでなく糖尿病だなんて余計なものが受け継がれてしまうのは皮肉だなと思いました。
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