「リスタート・アース」 感想 より先鋭的になりつつある中華パニック

概要

原題:Restart the Earth

製作:2021年中国

発売:インターフィルム

監督:リン・ツェンザオ

出演:ミッキー・ホー/チャン・ミンチャン/ミシェル・イェ/リー・ニン/ミー・ルオ/リー・ルオシー/ユー・ロングァン


人類は地球温暖化と砂漠化を食い止めるため、植物の成長促進剤を開発。だが突然変異により植物が爆発的に増殖、地球全体を覆うほどに成長し人類に牙を剥く。かろうじて生き残った人類連合軍は成長抑制剤の投与を試みるが…


予告編

感想




植物が襲ってくるタイプのパニック映画。

全編に渡って「植物に覆われ文明が崩壊した世界」をリアルなCGで描いており、かなりの気合の入れようがうかがえます。今の中国はこういうカネのかかった映画をポンポン作れる景気の良さがうらやましいところですね。最近はゼロコロナ政策でちょっと怪しくなってきましたが映画業界にも影響あるんでしょうか。



ただ、襲ってくる植物は大蛇とか触手系モンスターとあまり変わらない印象で、それほど目新しさはありません。しかも襲ってくるのは序盤だけで中盤以降は出番が激減。その代わりバスに乗って派手に斜面を落下するシーンや高所での鉄骨渡りなど荒唐無稽なアクションが充実しており、そっちの方はなかなか楽しめます。



しかしキャラクターや人間ドラマはもうどうしようもないくらい類型的。父と娘の絆的なやつにはもう本当にゲンナリするし、「スノー・モンスター」「シン・ジョーズ」にも出ていたお笑い担当のデブには「またお前か!」と突っ込みたくなるし、自己犠牲的にかっこつけて一人ずつ死んでいくメンバーとかあまりに既視感がありすぎます。ただ、主人公の娘を助けるために高所から落下した隊長のシーンだけはやりすぎでおもしろい。タバコをくわえながら落ちていくとかカッコつけすぎだろうと。いつになく難易度が高く芸術的な落ち方だったと思います。



さらに本作はお涙頂戴演出がいつもより過剰気味になっており、涙だけでなく鼻水やよだれをもドバドバ垂れ流しながら泣き叫ぶ姿はものすごいです。これ、泣かせるために子役をぶん殴ったりしてない? 邦画界隈でそういうパワハラが問題視されてるけど、大丈夫か?…それにしてもなんでこうも全力で泣かせようとしてくるかな。いつも言ってる気がするけど、そもそもそこまで深い人物描写をしてないから大して感情移入も出来ないし、あまりに「泣けやオルァァァ!!!」的なアピールが強すぎて引いちゃうんですよ。それとも中国の劇場ではこれを観てすすり泣きしているピュアな観客がいたりするもんなんでしょうか。



終盤、世界各国が一致団結して困難なミッションに取り組むあたりは露骨に「インデペンデンス・デイ」風味になっていますが、ちゃんと日本も入っていて少し安心しました。中国も抗日映画ばっかり作っているわけではないんですね。色々文句の付け所は多いんですが、総じて最近の中国映画の中では良い方だったと思います。



あと最後に突っ込んでおきたいのが、あれだけ飛んだり跳ねたり走ったり色々叩きつけられたりした後なのに、たとえ話をするためだけにどこからともなく生卵を取り出したのはいかがなものか。一体どこにどうしまっておいたのかと。



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