「キラー・ジーンズ」 感想 衣料品ホラーの極北

概要

原題:SLAXX

製作:2020年カナダ

発売:ハピネット・メディアマーケティング

監督:エルザ・ケプハート

出演:ロマーヌ・ドゥニ/ブレット・ドナヒュー/セハル・ボジャーニ/スティーブン・ボガート


憧れの人気アパレル店CCCで働けることになったリビー。その日は新作ジーンズ発売前夜で、開店準備に追われていた。だがそんな忙しい中、上司や同僚たちが一人また一人と消えていく。なんとその新作ジーンズがひとりでに動き出し、人間の血と肉を貪り喰らっていたのだ…


予告編

感想




トマト、ドーナツ、ケーキ、トラック、タイヤ、人形、ブルドーザー、ドローン、ソファ、便器などに続く非生物系殺人モンスター映画の最新作。



人気アパレルメーカーの新作ジーンズが勝手に動き出して人間をぶち殺し貪り喰らう!!



いや~これはたまりませんな。非生物と言ってもほとんどの場合機械や食べ物なのに今回は衣料品。まあちょっと前に「ファブリック」っていうドレスが襲ってくる変な映画もありましたが、あれは尺がやたら長くてスルーしちゃったんですよね。その点本作は1時間17分と節度を弁えており好感が持てます。



「それを身に着けた者は死ぬ」みたいな呪いのアイテム的な衣服を扱ったホラーは過去にあったかもしれませんが、勝手に動いて直接首を絞めてきたりチャックで人体を切断したり人肉を貪り喰らうような衣料品を観るのはさすがに初めて。非生物系ホラーとしては「キラートマト」「キラーソファ」に近い感覚ですがそれらよりも圧倒的に出来は良く、驚くべきことにクソ映画ではなくちゃんとしたマトモな映画になっており、マニアでなくとも普通に楽しめるクオリティです。



しかも、ただふざけているだけではなく真面目に社会派的なメッセージまで込められている。まさか殺人パンツが人を喰らう映画でファストファッション業界の闇を告発し、利用者に一考を促すようなストーリーになっているとは誰が想像したでしょうか。…とはいえ、あのキラージーンズの由来は何か他の作品で全く同じネタを観たことがあるような気はします。何だったか全く思い出せないけど。



スプラッターも意外と頑張っており、特に店員たちの積み重なった死体にキラージーンズたちが群がってグチャグチャと肉を喰らいジュルジュル血を啜っているシーンはおぞましさとアホらしさが実にユニークな割合で調和していて印象に残る素晴らしい名珍場面です。殺人方法にも一つ一つ工夫が凝らされていてどれもユニークだし、キラージーンズがボリウッド音楽に乗って踊る絵面も面白い。「ファストファッションのジーンズ」という狭いネタを隅々までしっかり使い切っており、珍作映画としての完成度は極めて高いと言えるでしょう。


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