「プレデターズ エヴォリューション」 感想 光学迷彩猪

概要

原題:PROIE/La traque

製作:2010年フランス

発売:彩プロ

監督:アントニー・ブロシアー

出演:グレゴワール・コラン/フランソワ・レヴァンタル/ベレニス・ベジョ


とある森でシカやイノシシがおかしな行動をとるようになっていた。恋人の実家にやってきていたナタンは、恋人の家族たちと一緒に人を襲ったイノシシの狩りへ出ることに。森へ入ると、無残な死体と化した動物が次々と見つかる。原因は農薬で汚染された水源だった。


予告編

感想





2010年のフランス映画がプライム無料になっていたので見てみました。2010年頃と言えば「プレデターズ」「ドラゴンボール エヴォリューション」が話題になっていたので、その2つを安易に合体させた邦題にしたんでしょうか。とはいえ意外と違和感のない組み合わせ。そのうえこのジャケットデザインだとシロウトには本家プレデターズの続編のように見えてしまっても全然おかしくない。彩プロの商魂たくましさがよく表れていると言えるでしょう。



これは宇宙忍者的なエイリアンがヤクザと一騎打ちする映画を想像してレンタルすると、相当痛い目に遭う作品です。なんせ本作の正体は農薬で汚染された水を飲んで狂暴化したイノシシが襲ってくる、純然たるアニマルパニックなのです。人間側は主人公ナタンを除いて農薬会社の関係者なので、イノシシに殺られても完全に自業自得といかにもフランス産らしいエコロジーなひねくれ方をしています。



私はアニマルパニックが大好きなので、まあこれはこれで楽しめますが、ただイノシシが全然画面に映ってくれないのはさすがにいただけない。基本草むらをガサガサいわしてブヒーブフォーとうなり、それを聞いた人間どもが勝手にパニックを起こしているだけ。襲ってくる時はかろうじて鼻先が映るだけで全身を現すことは一切ない。



人間側のダメージ描写はなかなか過酷なものがあり、イノシシとニンゲンの死闘がしっかり演出されているように見えなくもないんですがね。そこまでイノシシを映したくないのであれば、本家プレデターみたいに光学迷彩を駆使する宇宙イノシシにしておけば良かったんじゃないかと。もしくは農薬廃液の作用で身体が透けるようになったとか。それならイノシシがろくすっぽ画面に映らなくてもみんな我慢してくれますよ。



ただ本作はナタン以外の農薬会社関係者が人間のクズであり、イノシシはかわいそうな被害者という描き方。「人間の愚かさ」をこれでもかと前面に押し出したやるせなさが漂います。この辺がアメリカ産とは全く異なる空気感なんですよね。それなのにこれを「プレデターズ」「ディセント」を超える興奮度!アドレナリン大爆発!などとアホみたいな煽りを入れたうえ「プレデターズ・エヴォリューション」なんて浅薄な邦題で売り出したと知ったら製作者もさぞ驚くことでしょう。


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