「ザラタン 大海の怪物」 感想 怒り狂う海のカニ

概要

原題:怒海狂蛛 Mad Spider Sea

製作:2020年台湾

発売:ニューセレクト

監督:ジョー・チェン

出演:サニー・ワン/アリス・クー/レクセン・チェン


自らの過ちで隊長を死なせてしまい、酒浸りになっていた元救難隊員のジエ。娘のために立ち直ろうと、漁師として義父の船に乗せてもらうことに。だが、そこはジエを憎む船員や違法に金を稼ごうとするグループなどの敵意が渦巻いていた。そんな中、魚と共に網にかかった巨大なカニクモが現れる。


予告編

感想





ジャケ絵を見た感じ、嵐の海を漂う漁船を超巨大なカニが襲うパニック映画。



なんでもいいけどこれアルバトロスの公式サイトには中国映画と書いてあるんですが、imdbやwikiには製作国:台湾とあるし、監督も出演者もみんな台湾の人なので台湾映画じゃないかと思うんですよね。まあその辺はかなり微妙な国際問題ですが、とりあえずここでは区別して扱うことにします。最近の中国製量産型モンスターパニック映画とはだいぶ違う雰囲気の作品でしたし。



…で、カニが襲ってくるモンスターパニック映画なんて「ビッグ・クラブ・パニック」以来だなあ。なんて期待に胸を高鳴らせながら再生ボタンを押したら

「怒海狂蛛 Mad Spider Sea」

という原題が表示され、ようやくカニではなくクモ映画だと気が付きました。なんでまた海なのにクモなんぞが出てくるのか。一応海にもウミグモという生き物がいるっちゃいますが、あれはまた別モノだし。本作はリアルなタランチュラまで出てくるのでやっぱり普通に陸のクモのようです。



主人公は過去の過ちに苦悩する若い漁師ジエ。それ以外の漁師は大体カネカネ言ってる無法者ばかり。ボスの言うことを聞かない奴はすぐにナイフでブスブス刺されるし、下手な刑務所よりも治安が悪そうな漁船です。そんなプロレタリア文学感漂う労働地獄に巨大なクモがやってきて暴れる絵面は、同じく海上でサソリが暴れる「シー・トレマーズ」を彷彿とさせます。実際本作はアレと同じくらい楽しい作品になれるポテンシャルは充分あったと思うんですが、漁師同士のえらくギスギスした人間ドラマに重点を置きすぎているせいでいまひとつ及んでいない。クモ自体の造形はそこそこよく出来ているのに、これは実にもったいないことです。



そもそも海上で巨大なクモが暴れるパニック映画にマトモな人間ドラマなぞ誰も期待しておらんでしょう。しかもなんか妙に陰湿でネチネチしたダウナー系人間ドラマだし、観ていてあんまり楽しくない。違法なブツを運ぶだの遭難した怪しい女だの縁故採用云々だのは全然いらないと感じる。そこら辺をバッサリ削ってクモによる捕食シーンを増やし、トータル80分程度の尺に収めてくれればそこそこイケてるクモ映画になったのではないかと思ってしまいます。



…いや、どうせならクモじゃなくカニ映画にした方がいいですね。最後まで見てもなんで海にクモなのかさっぱり分からんかったし、別にクモでなきゃいけない理由も全くなかった。だいたい邦題の「ザラタン」もカニのことなんじゃないの。もしかしたらサメが陸に進出しまくっているのを見て逆に「クモを海に出せば目立つだろ」とかアホなことを考えたのかもしませんが。しかし人間ドラマがあまりにシリアスすぎて、どうもそういう悪ふざけを企んでる雰囲気ではないから余計わけが分からないんですよね。


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