「村人」 感想 田舎を捨てて都会に行く奴は許さん

概要

原題:Kreuz des Südens

製作:2015年オーストリア

発売:アマゾンプライムビデオ

監督:バーバラ・エーダー

出演:アンドレアス・ルスト/フランツィスカ・ワイズ/マリア・アーバン


犯罪捜査官のワーシッツは頭部に重傷を負い、ブルゲンラントの村へ帰郷する。あまり歓迎されてるとは言えない中、村長にサーカス公演に招待されるが、ナイフ投げショーで村の有力者に誤爆して死んでしまう事故が発生。ワーシッツはナイフ投げの青年が村人たちに復讐されるのを防ごうとするが…


予告編

感想



オーストリアのサスペンステレビ映画。アマプラ配信。


邦題が「村人」と異常に素っ気なく、ジャケ絵に煽り文句が一言もない。機械翻訳かと思いきや原題は「Kreuz des Südens(南十字星)」なのでなぜこれが「村人」に化けるのか本当にわけがわからない。アマプラは結構こういう味気無さそうな映画もたくさん配信してるんですが、一体だれがこんなのを再生するというのでしょうか。タイトルがシンプルすぎるせいもありますがGoogleやtwitterで検索しても誰一人として話題にしている様子がありません。


…と思ってスルーしてたら、アマプラゴミ映画沼で悶絶している河童ことjetさんに「村人というテレビ映画がだいぶ厳しい戦いでした」と言われたので私も鑑賞してみました。これは普通にオススメされたのかそれとも「一緒に苦しもうぜ」という意味なのか微妙に悩むところですけども…。まあ月も後半に入るとだんだん観る物がなくなってくるので、何かネタをもらえるのはありがたいことです。



内容は、重傷を負った捜査官のワーシッツが故郷の田舎に帰ったら村の因習を匂わせる殺人に気が付いてしまい、調べているうちに自らの身にも危険が及んでくる…みたいなよくある田舎サスペンスです。別に出来が悪いわけではないんだけど、めちゃくちゃ辛気臭くて重苦しくて単調なので観ていてつらい。オーストリアではよくこんな暗いドラマにスポンサーがつくもんだなと。この番組で一体何を宣伝しようというのか。それとも日本やアメリカのテレビ映画やドラマが軽薄すぎるだけなのか…




以下ネタバレ




で、この村で死んだ人は「子供を置いて都会へ出稼ぎに行こうとする奴は許さねえぞ!」ってことで殺されてたみたいです。ウィーンに対するやっかみみたいなものをセリフの端々から感じる。オーストリアの田舎もアメリカに負けず劣らず恐ろしい世界ですな。村の有力者をうっかりナイフで殺したサーカスの青年も表向きは事故だからってことで釈放はされてましたが、村人たちはリンチで処刑する気満々だったし、とても21世紀の文明社会とは思えない。


真相が発覚する場面は、役職を奪われてブチ切れたワーシッツが学校で一人で八つ当たりしてたらたまたま死体を発見したってだけなので今一つ盛り上がらないのですが、真犯人の凶行が明らかになるラストだけはそこそこしびれるものがありましたね。あそこでウィーンに戻って仕事に復帰すると答えていたらワーシッツも殺されていたんでしょうか…


コメント

genkinekojp さんの投稿…
村人という邦題はともかく、なかなか優れた1級のサスペンス映画です。
脚本だけでなく、登場人物のキャラクターが良く描かれている。
映像的にも、どうだぁという押し付けがましい構図や描写はなく、美しい画面です。
けばけばしいサスペンスを見慣れている人には不満かもしれませんが、よく出来な映画です。

岩石入道 さんの投稿…
>genkinekojp さん

どうもこんばんは。そうですね、私も出来は悪くないとは思ったんですが、ちょっと苦手なタイプの作品だったのでこういう感想になりました。アマプラのサムネと邦題が素っ気なさすぎてあまり観られてない作品なのかなと思ったんですが、意外とこの記事の閲覧数も伸びてるし、アマゾンレビューの数もかなり増えてるのでけっこう人気がある作品のようですね。
fulcrum さんの投稿…
短いので晩酌しながら見ました。なるほど、テレビ映画だったんですね。
古くて頑迷な村、という設定ですが、村の風景が比較的新しく感じられて違和感ありました。なんか新興住宅地っぽい。
ウィーン近郊のホイリゲ(居酒屋)村、グリンツィングを訪ねたことがありますが、建物は古臭く、家家は狭苦しく隣り合ってて、歴史を感じまた。農村だとまた街の感じは違うのかもですが、なーんかこの映画の「閉鎖的な村」は歴史を感じさせなくて、奇妙な人工的な感じがして、そこがまた怖かったですね。

謎解きを楽しむというより、オーストリーというあまり縁のない小国の日常風景を見られるのがよかったです。アマプラ、ここやスウェーデン、デンマーク、さらにアイスランド(きわめつけの小国、世界の辺境)映画とか見られて、良いです。劇場に行くにはリスクが高すぎるけど(笑)
岩石入道 さんの投稿…
>fulcrum さん

どうもこんにちは。
なんと、ウィーン近郊の村を実際に訪れた方からコメントが頂けるとは。オーストラリアと混同しないようにオーストリーと表記することも初めて知りました。勉強になります。それにしてもあの農村が新興住宅地ですか。私には充分田舎に見えましたが、欧州であれならまだ歴史が浅い方なんでしょうね。私も一度くらいは行ってみたいものです。

この作品は地味な邦題とサムネのわりにどうしてこんなに人気があるのかと不思議でしたが、確かに縁の薄い国々のテレビ映画はアマプラが出てくるまではなかなか観られないものでしたから、そういう隠れた需要を取り込めているってことのようですね。ちなみにアマプラのオーストリー映画であれば「プレシピス」という作品もありまして、まあそっちは不人気だしサスペンス的には全然面白くはなかったんですが「村人」と同様にあちらの日常風景や辺境の美しい景観を楽しめますよ。