「アンダーテール」(ゲーム) 感想  優しく心をエグってくるRPG

概要

原題:UNDERTALE

PS4版発売日:2017年8月

ジャンル:RPG


公式PV



感想



ゲーマーからするとかなり今さらな話ですが、アンダーテールをプレイしてみたので今日はその感想を。


ここんとこ仕事でも私生活でもろくでもないことばっかりなので、何か現実逃避に没頭できるRPGがやりたくなったんです。ちょうどセールで安かったし。



この作品については、アメリカ製のインディーズゲームのわりにはやけに話題になっているんだなあ…という程度の前知識しかなかったのですが、やってみると想像以上に尖った内容で驚きました。



ストーリーは、モンスターの棲む地底世界に落ちてしまった一人のニンゲンがモンスターたちと触れ合いながら地上を目指すというもの。



グラフィックとかBGMの雰囲気はかなり「MOTHER」っぽくて好み。

アメリカ人の若者が作ったらしいですが、全体的に日本のゲームの影響を受けまくっており何だかうれしくなります。



本作は「誰も死ななくていい優しいRPG」と宣伝されており、普通のRPGのようにランダムエンカウントで戦闘にはなりますが、敵を攻撃せずに話しかけたりナデナデしたりすることで平和的に戦闘を終わらせることが出来るようになっています。ここは「女神転生」っぽい感じ。



…なんですが、開始直後の序盤で私は「どういう戦闘システムなのかな?」という軽~い気持ちで数体のザコモンスターと最初のボスを倒してしまいました。停戦の要領がまだよく分からなかったというのもあって…。


すると、このゲームでは


「戦闘で相手を倒す」=「殺害」


ってことになっているようで、何だか非常に罪悪感を覚える雰囲気に。



いや、普通のRPGだったら相手を倒しても別に死ぬとは限らないじゃないですか。気絶するとか降参したとかさ。ただ戦闘システムに慣れようとしただけで何でこんなことになるのか。最初のボス戦だってまさか生きるか死ぬかの殺し合いだなんて思わなかったんですよ。



…という言い訳をしたところで亡くなったモンスターが生き返るはずもなく、何だか殺人を犯したような後ろめたく陰惨な心持ちでゲームを進める羽目になりました。



ちなみにその戦闘システムは昔のドラクエ的なターン制コマンドバトルですが、敵の攻撃を受ける時だけ弾幕シューティング風になるというえらく奇抜なもの。ここは東方projectに影響されたらしく、速度とか軌道とか非常にそれっぽい弾幕が散見されます。とはいえ別にシューター向けってわけではないので攻略に苦労するようなことはありませんでした。



で、ストーリーについてはこれ以上触れませんが、出てくるモンスターたちはみなコミカルで愛嬌があってほのぼのしていてニンゲンにも優しく、ゲームを進めていくほどに「私はどうして最初にあんな惨たらしい殺戮行為を犯してしまったんだ…」という苦悩と後悔が深まるばかりでした。巧みに罪悪感を刺激してくるセリフがところどころあるんだよね…。



そんな感じでスッキリしないまま1週目をクリア。本作はマルチエンディングとなっており、中途半端なプレイをすると中途半端な結末になってしまうようです。



なので、次こそは絶対誰も殺さずに平和主義者を貫くぞ!と固くケツイして2週目をプレイ。


するとこれがなんと居心地の良い世界であろうか。出会ったモンスターみんなと仲良くなりまくり明るく楽しく笑いながら、それでもクライマックスにはホラー的なおどろおどろしい展開もありましたが、最終的にはモンスターたちとニンゲンが手を取り合うこれ以上ない感動的大団円。


なんてイイ話なんだ…




ここまでやったらもうこのゲームを完全にクリアしたと見なしていいはず。

…と思ってネタバレ情報を見てみたら、この1週目は「ニュートラルルート」、2週目は「真の平和主義者ルート」と呼ばれるものでした。



…ただ、それだけではなく「ジェノサイドルート」という非常に物騒なルートもあると知ってしまいましたが。


いや、そりゃあるにはあるだろうとは分かってましたけどね。


でもそんなもんわざわざやる必要が全くないじゃん…。

1週目であんだけ罪悪感を持たされたんだから、そんな地獄みたいなルート絶対にやらんぞ!




…と思ってたんですが、その後買ったサウンドトラックをまったり再生していたらなんか聞いたことのないやたらかっこいいBGMがあるじゃないですか。




↑これなんですけどね。

どうもこれはジェノサイドルートの最終決戦で流れる曲のようで。

虐殺者になるのはものすげえ嫌だけど、こんな熱い戦闘BGMがあるのならやってみたいような気もする。いや、ゲーマーとしてはちゃんとやらねばならんのではないか。




…と意を決してやってみたら、もうこれがえげつないのなんの。

最初から最後まで完全にサイコホラーじゃないですか。


これは作り手の悪意を強く感じる。なんでこんなルート用意したんだ。しかし実際に手を下しているのは言い訳のしようもなくプレイヤー自身なので、どこまでも「お前は最悪だ」と言われている感じがして精神的にキツイ。マフェットを殺した後の演出には凹みました。



やることはモンスターを狩って、LVを上げて、金を稼いで、より強いボスモンスターを倒して…とドラクエだのなんだのといったフツーのRPGと何にも変わらないはずなんですが、いや、変わらないからこそ「今までゲーム内のこととはいえなんて残虐な行いを重ねていたんだろう…」とまた苦悩する羽目に。もう仏道に帰依した方がいいかもしれません。こんなにも命を奪うことの重みを知らされるゲームだったとは。最近巷で話題の「モンスターハンター」がとんでもない鬼畜ド外道ゲームに見えてきました。



平和主義者ルートでは固い友情を築いた愛すべきモンスターたちを、今度は片っ端から葬っていかなければならない苦しみ。信じてくれた相手を裏切り、恐れと憎しみをぶつけられ、なんかもう心が痛みまくりです。ここまで嫌な思いをさせられるゲームは今までに無かったなあ。主人公であるニンゲンの振る舞いもどんどんサイコ殺人鬼のようになっていくし。



しかもこっちが攻撃するとモンスターからの攻撃も他のルートより激しくなるんですよね。特にある中ボスとラスボスはこれまでとはケタ違いに難易度が高い。私は中ボスで10回、ラスボスで15回ほどリトライさせられました。これはヌルゲーマーには多少厳しいかもしれません。それとも装備をちゃんと整えておけばもっと楽に突破できるんでしょうか?



…と思って色々調べてみたら、ジェノサイドルートは難しすぎる!理不尽!クリアできない!と別の意味で苦しんでいる人が結構多いようで。まあ簡単ではないけど、そこまでかなあ…。


私はこの前PS4で配信された「グラディウス3」(AC版)をやったばかりなんですが、そっちでは1面をクリアするだけでも50回以上リトライしましたからね…それで全10面もあるんだから正気とは思えない。理不尽という言葉はこういうゲームにこそ使うべきだと思いますよ。



まあグラ3のことはさておき、ジェノサイドルートの最終決戦をプレイヤーに堪能させるためには最低限あれくらいの難易度が必要だったと思います。サイコ殺人鬼と化したニンゲンを止めるために現れた最後のモンスターがもし弱かったら悲しすぎるし、せっかくかっこいいBGMを流しても盛り上がらないですからね。



ただ盛り上がると言ってもプレイヤー側が悪の権化なので、勝利した後はさらに救いようもない恐ろしくサイコホラーなエンディングが待っているわけですが…。子供が見たら泣くんじゃないかな、あれ。



「誰も死ななくていい優しいRPG」というキャッチコピーも嘘ではありませんでしたが、クリア後の後味は極めて最悪で胸糞悪い。プレイヤーの心に消えない爪痕を残してくれる素晴らしいゲームでした。






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