「ウィッシュ・ルーム」 感想 何でも手に入るという不幸

概要

原題:The Room

製作:2019年ルクセンブルク・フランス・ベルギー

発売:ギャガ

監督:クリスチャン・ヴォルクマン

出演:オルガ・キュリレンコ/ ケヴィン・ヤンセンス/ジョシュア・ウィルソン/ジョン・フランダース/フランシス・チャップマン


ニューヨークから郊外の古い一軒家に越してきた芸術家の夫婦。リフォームをしていると奇妙な隠し部屋を発見する。そこは何かを欲しいと願うと何でも手に入る夢の部屋であった。貴重な絵画や大量の宝石、現金などを手に入れまくり、有頂天の夫婦。だが、流産を繰り返していた彼らが最も欲するモノは子供だった。妻が部屋に子供を願うと、赤ん坊が出現するが…


予告編

感想




欲しいものを願えば何でも手に入れられる、夢のような部屋を見つけた夫婦の話。何でそんな部屋があるのかとか、部屋が出来た原因とかそういう面での掘り下げは全くありません。なので、ドラえもんに便利な道具を貰ったのび太が私利私欲で禁じられた使い方をしてしまい因果応報で酷い目に遭うという一連の流れに類似したものを感じます。



主人公の夫婦は、夫のマットがまだ売れない絵描きで妻のケイトが翻訳家をやって細々と食わせているような状況。そんな彼らが夢の部屋を見つけてゴッホの絵やら宝石やら現金を出しまくってウハウハ三昧となるわけです。


よく宝くじで高額当選した人は結局その後不幸になる、という話を聞きますがこれも似たような話で、せっかく人生イージーモードになれそうだったのに欲深で調子に乗りすぎたために台無しになってしまう。こういう話を見聞きするたびに「なんでそんなアホなの? 自分だったら欲をかき過ぎずにうまくやるのになあ…だからよこせよ!」という気持ちにしかなりませんね。例えば私が宝くじで高額当選したら会社は即辞めますが無駄な散財は一切せず適当に分散投資して配当収入で慎ましく暮らしますよ。



あの部屋で願って手に入れたものは家から持ち出すと消えてしまう、という設定ですが、まあそれならそれであの家に引きこもって暮らせばいいわけです。食べ物が出せるのだから食うに困ることはない。家電は家から出さないんだから出し放題の使い放題で処分する手間も不要。私ならそうやって暮らしますね。



しかしこの部屋、本当にドラえもんの道具並みかそれ以上に何でもアリです。マットとケイトは子供を望んでいるにもかかわらず流産を繰り返しており、また妊活するモチベーションは残っていなかった。なので自分で苦労して作るより…と安易な考えで部屋に子供を要求し、授かってしまう。彼らはその子供をシェーンと名付けて育てます。



生きた人間まで出せるとかこの部屋は一体何なんだ…と気になってしょうがないところですが、前述のとおりこの夫婦がそこを疑問視することはありません。それどころかこの部屋はドラゴンまで実体化させることが出来かねないぞとマットが危惧し出します。なんで急にドラゴンの心配なんかし出すのか、ちょっと理解に苦しむところはありますが。シェーンが子供らしい浅はかさでそういう願いを叶えたらどうすんの!ってことみたいですが、そこまで何でもありならドラゴンキラーでもF-22でも出してもらって戦えばいいと思うんですよ。



予想通りシェーンが徐々に彼らにとっての脅威となり、命はモノじゃないんだ…部屋に願って作ってもらうようなもんじゃないんだ…という話になっていき、ついには願い部屋で直接対決に至ります。部屋の中に広大な空間を生み出し森や別の家を再現したり、自分の姿かたちを変えて相手を騙したり、自分のダミーを作り出して相手を騙したりとスタンドバトルみたいな展開はなかなか見ごたえがあって面白い。が、そこまで何でもアリならドラゴンキラーやF-22とまで言わずとも拳銃の一丁でも出してもらえば済む話なのでは? というのが気になってしょうがなかったです。まあ本作は寓話的なやつなんだろうしそういう細かいツッコミは野暮でしょうけども。


せっかくあんな素晴らしい部屋を見つけておいてなんでそんなにも不幸まっしぐらなんだこのボンクラ夫婦は!!という苛立ちは後味悪いエンディングで頂点に達しますが、まあこれはこれでそこそこ楽しめました。

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