「プリベンジ」 感想(ネタバレあり) 妊婦だって暴れたい

概要


原題:PREVENGE

製作:2016年イギリス

発売:ブロードウェイ

監督:アリス・ロウ

出演:アリス・ロウ/ジェンマ・ウィーラン/ジョー・ハートリー/ケイト・ディッキー/ケイヴァン・ノヴァク/トム・ディヴィス


娘の出産を間近に控えていたルースは、最愛の夫が山岳事故で亡くなるという悲劇に見舞われる。悲観に暮れるルースだったが、ある日自分の膨らんだお腹から声が聞こえてくることに気づく。神の子か、悪魔の子か!?お腹の赤ちゃんの声に従って、殺人妊婦のクソ野郎共に対する制裁が始まった…!

(↑ブロードウェイHPより)


予告編

感想



妊婦が胎児の声に従って殺人を犯していくというサイコなホラーコメディ。


どっかで聞いたような設定だなとは思うんですが、該当作が思い出せない。それにしてもなんだか妙にリアルなお腹だなあ…と思ったら主演はまさかの本物の妊婦さんでした。リアル妊婦が殺人鬼役を演じているホラー映画など見た事がありません。殺され役でもあんまり見ないけど。


 つまりホラーにおいて妊婦はあまり登場させてはいけないアンタッチャブルな存在なんです。しかし、本作で殺人鬼役のアリス・ロウは主演だけでなく監督・脚本までこなしている。妊娠中はホラー映画鑑賞すら避ける人も多いであろう中、まさかこんな胎教に悪そうな作品を発想して実際に作ってしまうとは実に驚きました。



妊婦であればいつでも誰でもお腹の子供を絶えず慈しみ、周囲にも優しく気を使われ幸せな出産に至る…というありがちなイメージに一石を投じたかったのかなと。また、妊娠している間は仕事がなくなってしまい、復帰できるかどうかも分からない…という理不尽な現実にも反旗を翻した結果こういう過激な映画が出来たらしい。女性が妊娠した時に社会に感じる危機感や憤りは想像以上のものがあるようです。



本作の筋書きは夫を山岳事故で亡くし、それに関わった人間に一人ずつ復讐していく…というもの。しかし何も知らずに観てるとその辺最後の方まで分かりにくかったですね。夫の事故に関わってたのはクライミング教室の講師一人だったような。他の人は何をしたんでしょうか?


まあそんなことは置いておいても、リアル妊婦が次々と殺人を犯していく絵面だけでも充分楽しめます。そんな非道徳的な映像を楽しんでしまっていいのかどうか微妙ですが、妊婦だって暴れたり人をぶっ殺したい時があるんだよ!!との監督の主張を考えればそこは素直に笑っておくべきでしょう。



そんな感じで社会から求められる妊婦像の真逆を描くことによって生まれるおかしみが本作の味となっていて、容赦ないスプラッター描写ながらもどことなく笑えるノリ。特にボクサーとやり合うくだりはかなりふざけてましたね。妊婦にナイフを向けられて思わず腹を殴ってしまうボクサー、しかし思った以上に妊婦が苦しんだのを見てつい助け起こしてしまい、まんまと刺されるボクサー。一体何をやっているのか。その前にわざわざグローブを装着して待機してるのも何かおかしい。警察を呼ばれ、犬用の出入り口から慌てて逃げ出すルースには別の意味でハラハラします。腹をぶつけていたように見えましたが…相当体を張った演技でしたね。



妊婦という存在に無意識に抱いてしまう固定観念。それを完膚なきまでに打ち砕いた邪悪な妊婦ホラーとしてマニアの脳裏に未来永劫記憶されるであろう怪作でした。


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