「パスワード:家 (h0us3)」 感想 邦題で損をしているが良作

概要

原題:h0us3
製作:2019年スペイン
発売:アマゾンプライムビデオ
監督:Manolo Munguía, Manolo Munguía
出演:Rubén Serrano, Miriam Tortosa, Roc Esquius

大学時代の情報処理グループのメンバーが、それぞれの恋人たちを交えて夕食会を催すために久々に集まった。 夕食中にメンバーの一人が、今インターネットで最も秘密だとされるファイルを開くことに成功したと告白。 そして、その中にあった拡張現実のアプリを披露する。
(↑アマゾン商品紹介より)

予告編




感想





「パスワード:家 (h0us3)」

一見すると全然面白くなさそうなタイトルです。
プライムで時々あるいい加減な機械翻訳を施されたジャンク映画のようにしか見えません。ジャケ絵も紹介文も特にグッとくるものはなく、尺も1時間44分と結構長め。

一体何人がこの映画を観たんでしょうか? 相当少ないものと思われます。私もお盆休み(3日しかないが…)でちょっとヒマになったのに観る映画が尽きたから仕方なく再生してみたというのが正直なところです。

しかし、これが意外と面白い。ジャンク映画と見せかけてこんな良作が埋もれているから本当にアマゾンプライムは油断できない。




静かな別荘に集まった大学時代の友人グループ。
リーダー格のラファが、「世界中のハッカーが解読を試みる機密ファイル」の解読に成功したと告白する。そのファイルはスマホ用の拡張現実アプリだった。

という話ですが、その前に本作は前半45分間がちょっと退屈です。集まったメンバーがIT畑の人間たちなんですが、彼らの最新テクノロジーとかセキュリティについての雑談が延々と続くからです。一応本筋に関わってくる内容ではあるものの、さすがに長い。本作がどういう映画なのか見えないまま長い雑談を聞かされるのはちょっとつらいものがありました。

しかし、ラファがある機密ファイルを解読して複製したスマホ用の拡張現実アプリを持ち出してから物語の吸引力が急に強くなります。
なんとそれはスマホの画面を通して30秒後の未来が見えるアプリだったという話。


30秒先の未来を知ることで何ができるのか?
前に2分先の未来を見通す超能力を持ったニコラス・ケイジが何やかんやするSFアクション映画がありましたが、彼はカジノで小銭を稼ぐだけのさえないオッサンでした。
たった30秒ではカジノで小銭を稼ぐことも難しいというわけです。

しかしそこに集まった人物はみな頭脳明晰なので何か面白い金儲けのアイデアが出てくるかもしれない。また、未来を変えようとしたらどうなるのか。そういう実験でもしていくのかなと思ったら全然違った。彼らはそのアプリのプログラムを解析し変数をいじることによって、30秒以上先の未来を見られないかと試みる。

これは非常にユニークかつエキサイティングな展開です。未来視できる不思議なアプリを不思議なままで良しとせず、その内部構造にまで踏み込むことによって何となくそれが本当にありそうなもののように思えてくる。私も一応プログラマーなので「数値を変えてみようぜ」という発想は理解しやすくリアリティを感じました。

で、その変数をいじってさらに先を見ることによって、誰も予想していなかった恐ろしい未来が明らかに…。

ただの夕食会が命を懸けた謎解きスリラーへ。家から一歩も出ることなく、スマホ一台通しただけでここまでスリリングな映画ができるということに驚きました。しかもこんな変なタイトルでひっそり配信されてるっていうのもね…。ということで、プライム会員の人はぜひ観てみるべきかと思います。







ラストについて(以下ネタバレ)





これは全部ラファが仕組んだドッキリ、ただの冗談でした~とか言い出すわけですが、あまりに手が込みすぎているわりにウケが悪いことも容易く予想可能なので、あのネタバラシを額面通りには受け取りにくい。彼らがパニックを起こし始めたので仕方なく誤魔化したってことじゃないかなと。ラストのモニカの反応を考えても、あのアプリは本物だったと考えるのが妥当ではないでしょうか。モニカもグルじゃないと成立しなかったドッキリだと思うし。





追記


監督本人からコメントが来てしまいました。
珍しいこともあるもんだ。
それによると

DANIが初めて電話を使用するときに、表に何が表示されるか、およびその理由を確認するように要求します。 :-)

とのことなので、もう一度観てみました。
ダニーが初めて電話(スマホ)を使用した時、彼は3時間後の未来を見ようとしていた。その時、表(テーブル)に何が映っていたかというと…
夕食が片付けられ、空のグラスが3つ。
これが何を意味しているのか。

ラストはラファとダビッドが酒をグラスに注ぎ、モニカが「私のスマホにこのアプリをインストールしたわよ」と言ってエンドロール。

あのアプリが本物だった場合、深夜まで3人で酒を飲んでいたということ。
ドッキリだった場合、グラス3つの映像を仕込んでおいたということになる。
だが、そんな映像を仕込む意味がちょっと分からない。このドッキリを受け入れてくれるのがモニカだけだと予測していたから3つなのか?

だけど別に3つじゃなくてもドッキリに何の影響もないわけで、ダニーもそれについては何も気にしていない。そもそもモニカ以外に受けないと分かってるならやるなよという話になってしまう。受ける受けないじゃなく、何かの実験や啓蒙のつもりだったのなら別だが…セキュリティ意識を高めるためとか…?

本当にドッキリだった場合アプリは存在しないので「私のスマホにこのアプリをインストールした」というセリフをみてもやはりあの未来予知アプリは本物だったと考えた方がいいと思う。本編の冒頭で「スマホを切ってください 冗談ではありません」と出てくるし。

となると、真実を共有した3人で深夜まで酒を飲みながら話していた…
という想像ぐらいしかできないんだが、それでいいんだろうか。
「エンディングはシンプルじゃない」と言ってるし、もっと深い意味がありそうなんだがなあ。
今後繰り返し見て、また何か思いついたら追記することにします。


コメント

GD さんの投稿…
グーグル翻訳、間違いをお許しください。
こんにちは。映画監督のマノロ・ムングイアです。
私たちの謙虚な映画を見て、推薦してくれてありがとう。名誉です。
「パスワード:家(h0us3)」は、映画への情熱と愛情を込めて作られた、真に独立した映画です。
映画の最初の部分はつまらないかもしれませんが、ネットワークセキュリティの基本について視聴者に紹介する必要があります。映画の最初の40分間で視聴できるものはすべて本物だと約束できます。また、RAFAとDAVIDの両方が連携すれば何でもできることも示しています。
エンディングはシンプルに見えるかもしれませんが、そうではありません。 DANIが初めて電話を使用するときに、表に何が表示されるか、およびその理由を確認するように要求します。 :-)
よろしくお願いいたします。バルセロナ、スペイン。

Google translation, please excuse the mistakes.
Greetings. This is Manolo Munguia, Director of the film.
Thank you very much for watching and recommending our humble film. It is an honor.
"パスワード:家 (h0us3)" is a truly independent film, made with our passion and love for movies.
The first part of the movie can be boring, but it is needed to introduce the audience on the basics of network security. I can promise everything you can watch in the first 40 minutes of the film is real. It also shows both RAFA and DAVID could do anything if they work together.
As for the ending, it may look simple but it is not. I challenge you to find out what can be seen in the table the first time DANI uses the phone, and why. :-)
Best regards from Barcelona, Spain.
岩石入道 さんの投稿…
Mr. Munguia, thank you for your comment.
Google translation, please forgive the mistake.

"H0us3" was a very good movie.
I was surprised to find it so interesting with just one smartphone without leaving home.
I tried to make the Japanese who saw this blog interested in "h0us3".
The first part was tedious, but the latter part made sense of the need.
However, my understanding was not enough.
I watched your hint and watched the movie again.
There were new discoveries and I felt that it was a movie that I could enjoy repeatedly.
I will change my password.
Murasaki さんのコメント…
人様のブログにて自己主張する事をお許しください。
監督直々にコメントされてあるのを見て、どうしても私の解釈をコメントしたくなりました。

以下、私のAmazonレビューです。
ttps://www.amazon.co.jp/review/RPSSOENDSTNAW/ref=pe_1162082_181361352_cm_rv_eml_rv0_rv
岩石入道 さんの投稿…
>Murasaki さん

どうもこんにちは。
レビューを読ませていただきましたが、非常に興味深く面白い解釈ですね。「ハードウェアに実装されてないうえに圏外だからできない」という発想はありませんでした。あの未来予知は何となくソフトウェアだけで出来そうに見えてたので、エンジニアの方でもなければなかなか思いつかない解釈だと思います。ただ正直未来予知など技術的に無理があるのは当然なので、そこはSFとして「しかしそれを可能にしたif世界」での話だと思って鑑賞するわけなので、その前提を疑えというのも酷ではないか…という気もしますね。

惜しいのはこの映画の監督が配信後しばらくはこのブログに限らずあちこち出没してコメントをくれていたので、もっと早くそのレビューを公開していれば反応を貰えていたかもしれません。

…で、私はだいぶ前にツイッターで監督が正解を述べているのを見てしまいました。公開から1年近く経っているのでここに記載しておきます。まずあの未来予知アプリは本物で、あのグループの1人(ジュリア)がその情報をもらしてしまったことが原因で彼らに破滅的な未来を引き起こしたとのことです。それに気づいたラファとダビッドは情報漏れを止め、みんなに冗談だと思わせることで破滅を防ごうとします。その試みは成功しましたが、モニカだけはアプリが本物だと確信しており、最後にああ言ったわけです。デビッドとラファはモニカにだけは真実を話し、なぜこれが全て冗談だと言ったのかを説明します。それでモニカも理解し、彼らに加わり、乾杯。それがあの3つの小さなショットグラスでした。

Murasaki さんのコメント…
お返事ありがとうございます!

という事は、タイトルのhour 0 us 3(時間は0、私たちは3人)にも納得ですね😳
配信元のTwitterを見つけたので、監督のツイートを探してみたいと思います。
岩石入道 さんの投稿…
な…なんと!?タイトルにそんな語呂合わせが隠されているとは…驚きですなあ。
sakura2010 さんの投稿…
観賞後、こんな傑作がこんな酷いタイトルで!と憤りながらこちらに流れてきました。
皆さんのやりとりで実にスッキリとしました。本当にありがとうございます。久々に見応えある映画でした。
岩石入道 さんの投稿…
>sakura2010さん

コメントありがとうございます。
このページがお役に立ったならうれしいことです。
邦題は確かに酷いんですが、よく考えるとこれ製作者が自分でつけちゃったんじゃないか?と思うんですよね。アマプラ配信作だし、劇中の字幕がたどたどしいことからも日本の配給会社は通してないんじゃないかなと。
sakura2010 さんの投稿…
お返事ありがとうございます!
邦題についてはなるほど、たしかにその可能性はありますね。Google翻訳でレビューに返事してたり、
また字幕もフォントが中国語みたいになってたり言葉遣いがおかしかったりしてましたし。

だとするとジャケ写といいあの邦題といい、そこからは全くもって映画の内容を想像させてくれない感じなのがむしろ潔いかも。。
パスワードに漢字って設定できないのが普通ですからせめて「パスワード:h0us3」みたいな邦題でジャケ写がもっとミステリー作品風だったら良かったのかも。
岩石入道 さんの投稿…
>sakura2010さん

この映画の邦題は確かに「パスワード:h0us3」が正解ですよね。ジャケ写も微妙ですし、最初は誰がこんなん観るのかなあと思いましたよ。まあでもこの手の無名映画でアマゾンレビューが80件もつくことは本当に滅多にないので、中身さえ良ければ多少のハンデがあってもヒットは狙える時代なのかなと思います。