「ヴァスト・オブ・ナイト」 感想(ネタバレあり) 1958年にアレが飛んでくるだけの話だが

概要

原題:The vast of night
製作:2019年アメリカ
発売:アマゾンプライム配信
監督:アンドリュー・パターソン
出演:シャイアン・バートン/グレゴリー・ペイトン/ゲイル・クロナウアー

1958年のアメリカ・ニューメキシコ州の田舎町。電話交換手のフェイとラジオDJのエベレットはおかしな周波数の音を耳にする。ラジオを通じて何の音か情報を募ると、それに軍の秘密任務が関わっているらしいと判るが。

予告編




感想


アマゾンプライム配信の自主製作SF映画。
しかしいつものどうでもよさげなクソッタレ自主製作プライム謎映画とは違い、大々的に宣伝されているうえにアマゾン独占配信、さらに吹き替え版やウルトラHD版アリという破格の待遇を得ています。アマゾンも一応自主製作映画をノーチェックでただ垂れ流しているわけではなかったんですね。



実際、中身はいつものくそったれ自主製作映画とは一線を画すクオリティです。例えば同じ宇宙人系SFの「エイリアン・ドミサイル」などが100点満点中せいぜい0.06~0.07点ぐらいの腐れミジンコ劣等生レベルだとすると、本作はその1000倍の60~70点くらいはつけられます。同じ自主製作映画でもこんなに圧倒的な格差が生まれてしまうとは驚きです。これならアマゾンでなくても独占したくなるというもの。ちなみに「エイリアン・ドミサイル」はプライム配信後にGYAOとかAPPLE TVでも観ることが出来るようになりました。んなあちこちで配信したって別に誰も観たくないだろうと思いますがね。


ただいくら本作の出来が良いと言っても、やっぱり低予算の自主製作映画なので内容は会話中心、絵的にはものすごく地味です。一番お金がかかったのはおそらく1958年の田舎町を忠実に再現したセットや小道具ではないでしょうか。

それでは話がすごく面白いのかと言えば実はそんなこともなく、電話交換手フェイとラジオDJのエベレットが受信した奇怪な音が何なのかというサスペンスはそれなりに盛り上がりはするものの結局誰でも想像できるありきたりな真相でしかない。これは仮に本作が1958年に製作公開された映画だったとしても、当時の人間にさえあまり斬新には映らないほど古臭いストーリーのSFなのではないかと思います。

では本作の優れている点は何かというと、長回しとか、ドローンを駆使した独特のカメラワークだとか、50年代のテレビドラマを模した劇中劇風の演出とか、ただの会話劇でも電話交換手を介することによってより音声に集中させる手法とか、そういう技巧的な部分に集中していると思います。

ストーリー自体は色々と意味深な面もあるにせよやっぱり古臭いし大して面白くないなと思ってしまいましたが、話はつまらなくても最後まで見れる。それだけのことでも、普段からくそったれ自主製作映画を大量に観まくっている身にはこの監督の才能が非常に眩しく映りました。これをきっかけに商業映画を任されるようになれば、素晴らしい作品を連発してくれる可能性もあるのでアンドリュー・パターソンという名は覚えておこうかなと思います。

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