「ドリラー・キラー マンハッタンの連続猟奇殺人」 感想 電動ドリルでストレス発散

概要

原題:THE DRILLER KILLER
製作:1979年アメリカ
発売:キングレコード
監督:アベル・フェラーラ
出演:ジミー・レイン(アベル・フェラーラ)/キャロリン・マーズ/リチャード・ホワース

女2人と一緒に暮らしている画家のリノ。彼は今に傑作を描いて画商に買ってもらおうと考えていたが、現実には全く稼げず家賃の取り立てに悩む貧困生活を強いられていた。そんな折、同じボロアパートにロックバンドが越して来て四六時中騒音に悩まされることになる。いよいよキレたリノは、電動ドリル片手に通行人やホームレスを襲い始める。

予告編




感想


名前だけは聞いたことがあるけど、何だかんだで今まで観る機会には恵まれなかった電動ドリル殺人鬼もののホラー映画。多分レザーフェイスがチェーンソーで暴れてたのを観て「電動ノコギリがアリなら電動ドリルでもいけるんじゃね?」くらいのノリで作られたのではないかと思います。



売れない画家が貧困と騒音のストレスでおかしくなり、たまたまテレビで宣伝していた「ポータブル電源」を見て、これを使えば電動ドリルで通行人やホームレスを襲ってストレス解消できるぜ!とばかりに夜の街へ繰り出すのであった。

実にアホみたいなストーリーです。しかし、監督兼主演のアベル・フェラーラって私の知らないところで巨匠扱いされてるすごい人みたいなんですよね。その片鱗かどうか分かりませんが、アホみたいな話のわりにえらく芸術的な雰囲気が感じられます。

主人公のリノが売れない画家ってことで、おそらく売れる前のフェラーラ監督の内面が色濃く投影されているのだろうと思います。本人が演じているわけだし。誰も俺の作品の良さを分かってくれねえ!だからこんな貧乏なんだ!皆してカネばかり要求してきやがって!!的な暗く鬱屈した衝動が丸出し。気持ちは分かるが、こういう映画の良さを理解できる人はあまりいないような気が…。

確かに、電動ドリルをギュインギュイ~ンと唸らせながらホームレスや通行人に飛びかかるシーンはテンションが無駄に高くてちょっと面白いです。こんな風に芸術とB級ホラーの境目が曖昧な映画というのは観たことがない。カネがないから大した残酷描写もありませんが、その代りブラックな笑いを提供してくれます。でも、良いのはそれだけかな。


芸術ゆえによく分からんところだらけなんですが、特に理解できなかったのは同じアパートに越してきた「ザ・ルースターズ」なるロックバンドの騒音がうるさくてブチ切れたはずなのに、ザ・ルースターズのメンバーを全然襲わなかった点です。彼らの演奏シーンがやたら多くて私もちょっとうるさいなと思っていたのでそこが理解不能かつ大きな不満でした。ドリルで穴を空けられれば誰でも良かったのか。でもその割に画商は念入りに風穴開けてたからなあ…。ラストもヤケクソじみてるというかオチてないし、「ものすごく変なモノを観たな」という満足感はあるものの、面白いか面白くないかと問われれば特に面白くはないという他ない奇怪な映画でした。




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