「ジェシカ」 感想  戦士は昼寝するものだ

概要

原題:Jessica Forever
製作:2018年フランス
発売:ミッドシップ
監督: キャロリーヌ・ポギ/ジョナタン・ヴィネル
出演: アオミ・ムヨック/セバスティアン・ウルゼンドヴスキー/オウギュスタン・ラグネ/ルカ・イオネスコ

愛情を知らずに育ち、生きるために略奪や殺人を繰り返す“怪物”と化した孤児たちが溢れる近未来。武装ドローンを操る特殊部隊から彼らの命を守るため、孤児たちを率いるリーダーがいた。彼女の名は、ジェシカ。ある日、特殊部隊に狙われた一人の孤児を救い出し、仲間に迎え入れる。殺人の衝動を抑えられず不安を抱えながらも、仲間の愛情に触れ次第に打ち解けていく彼だったが、特殊部隊の再襲撃を受け命を落とす。隠れ家を知られてしまったジェシカ一団は、新たなアジトを見つけ束の間の安堵の日々を過ごすが、仲間の死に直面した孤児の一人が恐怖心から己の中の“怪物”を取り戻し、殺人事件を起こしてしまう。特殊部隊に通報され、万事休すの彼ら。ジェシカたちの最期の決戦の時は、刻一刻と迫っていた。
(↑クロックワークスHPより)

予告編




感想









久々に戦略核兵器級のジャケット詐欺が我が国へと撃ち込まれてきました。この業界だけどうしてこうもあからさまな虚偽表示が堂々とまかり通るのか。マニア的には既にそれすらもネタとして楽しむ要素になってますが、本作はさすがにやり過ぎでしょう。

海外版のジャケを見ると、このジェシカさんの姿だけはそのままなんだけど日本版は勝手に銃を持たせるわ近未来風の背景にしてしまうわ何一つ合ってない煽り文句を追加しまくるわとやりたい放題にもほどがある。

内容は近未来SFアクションなどではなく、ド田舎で少年たちがひたすら悶々と遊んでいるポエムのようなゲージツ映画です。ド田舎すぎて近未来かどうかは分からんけど別にディストピアではないし、ジェシカさんとやらも別に孤高でもなければ戦うシーンなども全然ない。それどころか出番すらほとんどないし、何なら寝ている姿が一番多いんですが。これを「謎に満ちたニューヒロインが降臨」とは…物は言いようですな。彼女によると、「戦士は昼寝するもの」だそうです。斬新と言えば斬新か。
となると、私も戦士を名乗ってもいいんでしょうかね。


昼寝はさておき、近未来では怪物のように凶暴な孤児がドローンによって取り締まられており、ジェシカはそんな孤児たちを集めて面倒を見ているという話です。孤児と言う割にはみんなやけに屈強で、中には薄毛に悩んでいそうなオッサン臭い奴もいるんですが。なので孤児院というよりはジェシカを教祖様としたカルト教団のように見えてしまいます。

彼らはドローンの監視網を避け、アジトに潜む緊張感あふれるディストピアライフを送っているのかと思いきや、そんなの冒頭の一瞬だけであとは全然そんな感じではない。

ネットは普通に使えるし、ショッピングモールで楽しくお買い物は出来るし、フードコートでソフトクリーム食ってるし、気ままに海水浴もするし、みんなでワイワイとプレステ4のゲームで遊んだりしてるし、知らん人のパーティに潜り込んで彼女を作ったりとまるでディストピアらしさの欠片もない。むしろユートピアなのではないか?というくらい書き出してみるとすごく楽しそうな生活なんですが、彼らのテンションはものすごく低いです。一体何が不満なんだろうな。

ジェシカは寝てばっかりだし、どうやって金稼いでるのか分からんところもカルト教団臭さを感じさせます。

そして終盤、散々遊びまくった彼らが急に「逃げないで運命と戦うと決めた」とか言い出し、張り切って武装したところでジ・エンド。上に載せた公式サイトのあらすじはラストまで余すところなく網羅していたというわけです。ちょっとぐらい戦闘シーンがあってもバチは当たらないと思うんだけどな。

社会の爪弾き者が、やっぱりどうしても周囲に溶け込むことは出来ず、爪弾き者同士で群れるしかないというやるせなさでも描いた映画なのかなとは思いましたが、いかんせん娯楽性皆無の観るポエムといった風情なので正直糞つまらんと言わざるを得ませんでした。


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