「ウォールストリート・ダウン」 感想 市民から金を吸い上げる巨悪ウォール街に怒りの銃弾

概要

原題:Assault on Wall Street
製作:2013年アメリカ
発売:AMGエンタテイメント
監督:ウーヴェ・ボル
出演:ドミニク・パーセル/エリン・カープラック/エドワード・ファーロング/ジョン・ハード/キース・デヴィッド/マイケル・パレ/エリック・ロバーツ

警備員として働くジムには、重病を患った妻がいた。高額な治療費を捻出するために四苦八苦するジム。仕方なく資産運用していた分を引き出そうとブローカーに連絡すると、なんとジムの保有していた有価証券は全て紙切れになったという。彼らは不況による破綻を回避するため、不正取引に手を染めていたのだ。いよいよ首が回らなくなったジムは自宅すら差し押さえられ、悲観した妻は自殺してしまう。そして金融機関の不正を知ったジムは、スナイパーライフル片手にウォール街へ出向くのであった。


予告編



感想


私が普段観る映画と言えばホラー、アクション、SF、サスペンスといったところですが、本当は金融業界をテーマにした映画も観たいんですよね。「マネーショート」だとか「ウルフ・オブ・ウォールストリート」とかああいうやつ。

けど、あの手の映画ってなぜかやたら長いのばっかりなんですよね。私は普段から70~90分程度の映画ばかり観ているので2~3時間もあるようなのは手を出しにくい。ボクサーが3分1ラウンドを体に染み込ませているように、私ももう90分という尺に脳が最適化されてしまっているんです。

そんな中、本作はウォール街をテーマにしていながらも101分とまあまあ短めの尺に収まっていたので借りてきました。







が、よく見るとこれはウーヴェ・ボル監督作じゃないですか…
知らない人はほぼいないと思いますが一応ボルについて説明しますと、彼はエド・ウッドやマーク・ポロニアと並び世界3大クソ映画監督と称されるほど高名なクソ映画の達人です。

しかしボルは危機的な映画の仕上がりとは裏腹に出演者からの評判は非常に高く、ボルの映画に出演したがる有名俳優は後を絶たないとか。なので本作もエドワード・ファーロングやらエリック・ロバーツやらマイケル・パレやらとB級的にはスーパースター勢揃いと言ってもいい感じになってます。


ということであまり期待せずに再生したんですが、これは意外にもかなりの良作でした。ボルがこんな普通にイイ映画を撮るとは知らなかった。世界3大クソ映画監督の一角とは思えません。例えるなら世界3大投資家と言われる割には胡散臭い世迷言ばっかり垂れ流してるように見えるジム・ロジャースのようなものでしょうか?


それはさておき内容の方ですが、資産運用を投資ブローカーに丸投げしていた模範市民のジムが投資に失敗して財産も職も家も妻もすべて失い、これでもかと転落していく様をやたらジックリ重苦しく描いています。ドンパチは最後の最後にちょろっとあるだけですが、その方がかえってリアリティあるような気がするし安っぽくなくて良いです。


ジムが一体何に投資していたのかが気になるところですが、不動産投資だったみたいです。REITってやつですかね。1年で1割確実にもうかるはずだったのに全部紙切れになったどころか逆に6万ドルもの請求が来てしまうっていう。どういう仕組みなんだ。ブローカーが不正を働いていたからだというのもありますが、詳しいところはなんだかよく分かりませんでした。なのでやっぱり投資信託なんてやるもんじゃないな、というイメージだけが増強されましたね。投資するならやっぱり現物株に限ります。現物なら最悪紙切れになっても余計な請求は来ないでしょう。


ブチ切れたジムがウォール街の悪人共をスナイプしていくクライマックスはなかなかの爽快感がありますが、それより特筆すべきは不正の主犯である証券会社社長との対決シーンです。単純なドンパチで終わるのではなく、低所得弱者と金融を牛耳る強者との信条のぶつかり合い。…と見せかけて、あのとんでもないオチ。あれは読めない。マイケル・パレの使い方も完璧です。
これがあのボル映画なのか。ボルに一体何があったんだ。これはボルすげえと言わざるを得ない。ということで、本作は金融業界に反感を抱いている方には特にオススメです。

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