「アンデッド/ブラインド 不死身の少女と盲目の少年」 感想

概要

原題:The Dark
製作:2018年オーストリア
発売:ニューセレクト
監督・脚本:ジャスティン・P・ラング
出演:ナディア・アレクサンダー/トビー・ニコルズ/カール・マルコヴィクス/マルガレーテ・ティーゼル

あなたを、食べたい―。君を、見たい―。
足を踏み入れた者は二度と戻れない森<デビルズ・デン>
そこには、人を襲って喰らう不死身の少女がいるという
その森に迷い込んだ、盲目の少年
少女が飢えていたのは、人肉だったのか それとも、愛だったのか
(↑ニューセレクト公式HPより)

予告編




感想

原題は「The Dark」と非常にシンプルなのに、わが国ではなぜかこんな長ったらしいタイトルに化けてしまう。
ここまで邦題と原題の剥離が極端に著しい映画は
「カールじいさんの空飛ぶ家(原題:UP)」
以来かもしれませんね。


内容的には、あることがきっかけで人喰いゾンビと化してしまった少女が、その棲み家に迷い込んできた盲目の少年と交流することによって心の傷を癒していく…みたいな感じなのかな…と私は受け取りました。

が、何しろ本作は完全なる芸術映画で、状況も設定も人間関係も何もかも
「いちいち説明するのもめんどうだ…てめえで勝手に想像しろ…」
と言われているにも等しい突き放し方。


ストーリーは童話的でメルヘンチックでさえあるのですが、映像は逆にリアリズムに満ちており、そのギャップが独特のムードを醸し出しています。リアリズムっていうか単にバッチイだけと言ってもいいけど。何しろ人喰いゾンビと化している少女ミーナは序盤からハゲオヤジのハラワタを喰い散らかしたしたあげく血まみれの口からゲップをかましてくれるのです。きたねえよ。ファンタジーなボーイミーツガール物のヒロインとしては空前絶後の所業と言ってもいいのではないか。



本来は美しい少女だったのに、なんかのアレで醜いバケモノの姿に!

…ってのはファンタジーの世界では割と定番?なのかなと思うんですが、私の目には人喰いゾンビというかブラックメタルバンドのメンバーのように見えてしまいました。先ほど述べたハゲオヤジこと敬虔な(?)キリスト教徒のハラワタを喰い散らかしてゲップというのもアンチキリストなブラックメタルのパフォーマンスそのものではないかという気がします。いや、別に私はメタラーではないので気がするだけです。イメージ的に。まあそんなしょうもないことを感じたのは多分私だけで製作者にはそんな意図はなかったと思いますけどね。



そんなこんなで盲目の美少年と人喰いメスゾンビの繊細な心の交流が描かれても、私には退屈なだけなので「借りる物を間違えたな…」としか言いようのない後悔に包まれながら鑑賞していたのですが、一応人喰いゾンビだけあってそれなりにスプラッターな見せ場がちりばめられていたのは救いでした。ただ、そこは逆にダークファンタジーとしての本作に期待したであろうメイン顧客層にはちょっと辛いくらいの描写だったんじゃないかなと微妙に心配にもなりましたが。


そういう観点で見るとどっちつかずというか、観客のことは考えずに自分の撮りたいものを好きなように撮ったんだよといういかにも芸術映画的なエゴイズムもやはり多少は感じます。なのでそういうものを許容できて、かつダークファンタジーが好きな人なら刺さるものがあるのではないでしょうか。


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