「ザ・メニュー」 感想 カキの気持ちを考えた結果

概要

原題:The Menu

製作:2022年アメリカ

発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン

監督:マーク・マイロッド

出演:レイフ・ファインズ/アニャ・テイラー=ジョイ/ニコラス・ホルト


ある孤島の高級レストランにやってきたマーゴとタイラー。そこではタイラーが心酔するカリスマシェフ・スローヴィクの手による至高のフルコースが堪能できるはずだった。だが、マーゴはレストランの異様な雰囲気に怪しさを感じ始める。


予告編

感想





意外とありそうでなかった美食系スリラー映画。

カリスマシェフのいる孤島の高級レストランにやってきたが、何やらカルトめいた雰囲気がありコースが進むうちに何だかおかしなことが…という話。



こういうのを見ると、毎日毎日生協の総菜やらラーメン屋やらそば屋やらで済ましてばかりの人生がちょっとだけ虚しくなってきます。たまには自分も高級料亭にでも行ってコース料理を味わってみようかな…と思わされますね。まあそういうところって独りで行くもんじゃないだろうし、かといって一緒に行く人もいないので結局行かないんですが。



ただ、本作に出てくる料理は何一つ美味そうなものは無かったですね。なんかすごい技巧を凝らしてテーマも凝りに凝ってるような雰囲気の格式ばった料理が次々出てくるものの、全然そそられない。それは意図的なものだから別にいいんですけども。



しかし、生ガキにレモンキャビアなるブツを乗せた料理にはちょっと驚きましたね。この前観た「ヴィーガンズ・ハム」という食人映画で


「カキにレモン汁?

自分の目に垂らしてカキの気持ちを考えろ!」


などという理不尽なセリフがあったわけですが、まさかこんなスマートな解決法があったとは…。まあ主人公マーゴが「カキは普通に食いたい」と言っていたのでやっぱりそんなに美味くはなさそうでしたが。



カリスマシェフのスローヴィクも非常にめんどくさそうな男に見えます。料理は自然と一体となった総合芸術であるとか何とか海原雄山チックな弁舌をかますわけですが、彼を妄信する従業員たちや心酔している客のタイラーなどを見ていると、どうもあのレストランがまるで病んだ美食倶楽部のように思えてきます。料理を崇高な芸術扱いし、客を選ばれしセレブで固めればただの一料理人であってもカルト宗教の祖となることができる。たまたま代理で紛れ込んだ非セレブのマーゴがそんな場の雰囲気にゲンナリするのは観客として非常に共感できるところです。あんな気難しいシェフに「こやつに私の作品の本質が理解できるかな?」みたいな目で見られながら食事を楽しむなんて無理。



スローヴィクはカルト教祖というか客やオーナーに不満を抱えすぎてとんでもない拗らせ方をしており、それが色々と物騒な趣向に繋がっていくわけですが、芸術を意識しているので何だかえらく難解なんですよね。傲慢な客を批判しているのはいいとして真面目にキリスト教などを意識しながら考察しないとわけわからんっぽいし私の理解の及ばないところだらけでした。かといって本作をつまらんと言えば「お前は味のわからん豚や猿だ」と詰られ、素晴らしいと言えば「本当に分かるんならお前も作ってみろ」と言われて自殺に追い込まれるような感じなので微妙に感想が書きにくい。ということでそこそこ楽しめましたわぁくらいのアホっぽい玉虫色の感想で逃げておきます。まあ嘘ではないですしね。味覚音痴のアメリカ人の食べるあの忌まわしいチーズバーガーで充分な一般人だから別にこれでいいんです。



以下ネタバレあり



デザートのくだりでチョコの帽子が溶けてるところは笑わせていただきました。
なんでみんな大人しく料理されてたんだ。


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