「バウンティ・オブ・ザ・デッド」 感想 逃げる者を追う喜び

概要

原題:Dead Bounty/The Trees have Eyes

製作:2019年アメリカ

配信:トランスワールドアソシエイツ

監督:ジョーダン・パチェコ

出演:トニー・モラン/ティモシー・パトリック・クイル/デヴィッド・マイケル・カーペンター/ジャクリーン・ファビアン/クリス・オライリー


逃亡犯を追い、深い森の中へやってきた賞金稼ぎのグループ。途中でキャンプにやってきた若者たちとトラブルを起こしながらも、ターゲットを発見し捕獲する。だが、どこからともなく現れたゾンビの群れが彼らを襲う。


予告編

感想




「逃げる者を追う喜び」を掲げながら活動するバウンティハンターたちが一転してゾンビに追われる側となってしまう様を描いたゾンビ映画。


例によって「itn distribution」のロゴで目が潰れそうになりますが、ごく低予算ながらも非常にマトモな作り。難解な電波的展開もなく、ゴア描写はかなり気合が入っており、そこそこ楽しめる出来栄え。これならitn印の中ではトップクラスのクオリティを持った優良作品であると断言できます。



とはいえ人里離れた森の中でクラシックスタイルなノロノロゾンビに襲われるだけの話なので目新しさはほとんどありません。しいて言えば賞金稼ぎグループだけではなく普通の若者グループとのダブル主人公制になっており、後半で合流する形になっていることぐらいか。喰われ役も多いしゾンビも多い。人里離れた森なのになんでそんなに人口密度が高いのか気にはなりますが、尺が1時間15分と短いわりにはボリュームたっぷりの捕食シーンが味わえて良いです。特殊効果担当はトム・サヴィーニ先生の生徒とのことで質は高く、群がるゾンビがお腹を喰い散らかす描写が過去作に似ているように思います。



物語のテーマ的には「生き延びるためには誰かを見捨てなければならない」という非情さが強調されていた印象。若者グループ側の主役であるサマンサとランデルは、恋人がゾンビに喰われてメンタル崩壊しちゃった友人に肩を貸しながら逃げようとします。が、サマンサは「アタシは疲れたからもうムリ!あとはアンタが連れて走って!絶対に友達を見捨てないでね!」などと勝手なことを言い残して一人で走り去ります。


しかしランデルはもともと「足手まといは置いていくべきだ」と強く主張しており、サマンサに説得されてしぶしぶ手を貸していたような男。なので当然のように速攻で友人を見捨てて逃げてしまう。



このランデルは明確にクソ野郎として描かれていますが、あくまで善人面してヒロイン扱いされてるサマンサはもっとひどいような気がします。お前が真っ先に見捨てた形になるんじゃないのかと。そんなつもりはなかったにせよせめて一緒に行動すべきだったのではと。それなのにランデルをなじりまくるわ、合流した賞金稼ぎにも「ランデルは友達も私も見捨てて逃げた、死んで当然のクソ野郎よ」などとボロクソに言っちゃう始末。



しかしサマンサも賞金稼ぎも襲い来るゾンビの前にきれいごとは言っていられなくなり、生き延びるために仲間を見捨て、犠牲にしていく。まあゾンビ映画ですからこれは現代社会にも通じる普遍的メッセージなのだという風にも感じられます。何にせよ今さら感があるしもう少し尖った個性が欲しいかなとは思いましたが、ゾンビ映画ファンなら充分楽しめる作品でしょう。


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