「アオラレ」 感想 ストレス社会が産んだ脅威のサイコモンスターオヤジ

概要

原題:Unhinged

製作:2020年アメリカ

配給:角川

監督:デリック・ボルテ

出演:ラッセル・クロウ/カレン・ピストリアス/ガブリエル・ベイトマン/ジミ・シンプソン


レイチェルは息子カイルを学校へ送り届ける途中、青信号になっても発進しないピックアップトラックと出くわし、つい激しくクラクションを鳴らして追い越してしまう。だが、そのピックアップトラックにはストレス社会が産んだ脅威のサイコモンスターオヤジが乗っていたのであった…


予告編

感想




子供を乗せたシングルマザーが邪魔なピックアップトラックにクラクションを鳴らして追い越したら、実はとてつもなくやべえオッサンが乗ってて、無茶苦茶煽られまくっちゃう話。ロードレイジものの中では「激突!」までとはいきませんが、「ロード・キラー」あたりと並ぶくらいには面白かったです。話的にはそれらより「ロード・インフェルノ」に似通った印象を受けましたけどね。



ちなみに予告編が木曜洋画劇場風味になってて、ある意味本編より面白いです。というかこの予告編、テレ東スタッフが作ってません? いつか午後ローで放送してくれるとうれしいですね。



それにしても、サイコドライバー役のラッセル・クロウのとんでもない激太りっぷりには驚きました。私は彼の出演作をほとんど見ておらず、未だに「グラディエーター」の時のイメージのまま更新されていなかったので。にしてもマキシマス役の時はあんなに格好良かったのに、本作のラッセル・クロウと来たらまるでゲノン総督みたいな救いようのないゲスくてむさ苦しいヒゲモジャの巨デブじゃないですか。役作りだろうけど人相もめちゃくちゃ悪いし。一体彼に何があったというのか。20年という月日はあまりにも残酷ですなあ。まあ私も20年前に比べたら相当肥えてるのであまり人のことも言えませんが。つーかグラディエーターってもう20年前の映画なのか…



まあそれはともかく、主人公のレイチェルはそんな凶悪な巨漢サイコドライバーにクラクションを鳴らす愚行を犯してしまったことから延々煽られ続ける羽目になるわけです。確かに急いでいる時に青信号で発進しないクルマがいたら私でも鳴らすとは思いますが、あんなにビービーけたたましく鳴らしまくる必要はないでしょうね。あれじゃサイコドライバーじゃなくてもキレますよ。



ただその後サイコドライバーが問答無用で煽ってきたのかと言えばそうではなく、ちゃんと謝罪したうえでレイチェルにも謝罪を求めてきたのがポイント。たとえ面白くなかろうとそこで「自分のクラクションの鳴らし方も悪かった」と認めておけば、その後あんな恐ろしい目に遭わずに済んだかもしれないのに。



今のアメリカはストレス社会で余裕のない人が増え、煽り運転からの交通トラブルが激増している…という前振りがあります。日本でもそうだし、どこも同じですね。私も今の愛車を買ったばかりの頃に北海道の豊浦町という秘境レベルの超絶ド田舎を気持ちよく走っていたら、若い女性の運転する初代ヴィッツにピッタリくっつかれてしつこく煽られたことがあります。思い当たる節は全くナシ。見渡す限り他に人も車も全くいなかったのでついアクセルを踏み込んで引き離そうとしてしまいましたが、それでも無表情でベッタリくっついてきたあの女は相当イカレた奴だったと思います。まあムキにならずに停まってやり過ごすべきだったなと今は反省してますが。



本作のサイコドライバーもストレスにやられたせいで強烈にサイコ化したという設定で、「フォーリング・ダウン」のD-フェンスを彷彿とさせるキャラクターでした。これを見たらラッセル・クロウ主演で「フォーリング・ダウン」をリメイクしてほしくなりましたね。絶対面白くなると思う。



しかしサイコ側だけではなく、レイチェルの方も離婚やら遅刻でクビやらストレスまみれになっており、そのせいでクラクションを押す手にも力がこもってしまった感じ。何もかもこの鬱屈として陰険な格差社会が悪いのです。搾取する側とされる側の構造がネットによって鮮明になりすぎた。知らずにいた方が幸せなこともある。私も年々ストレスを溜めまくって鬱々としてますし、いつこのサイコドライバーのようにブチ切れてしまってもおかしくないかもしれません。あれほどまでに悪逆非道の限りを尽くすサイコドライバーに対し、あろうことか爽快感すら感じてしまいましたからね。


コメント

Jing-Fu さんの投稿…
改めまして、コメントさせていただきます!
いや〜、ラッセル・クロウは『グラディエーター』の頃の容姿が見る影もないほどの百貫デブでしたね。
普通はあんな奴に組みつかれたら格闘に憶えがあっても太刀打ちできません。
ラッセル・クロウはこっちのキャラクターに方向転換した方が良いのでは?と思いました笑
岩石入道 さんの投稿…
Jing-Fuさん、どうもこんにちは。
今回の彼は120キロ以上ありそうで、そこまでの超巨漢がサイコ殺人鬼をやるのは珍しいので新鮮でした。あそこまでのフィジカル差があったら女性じゃ絶対太刀打ちできないという絶望感が良かったですね。方向転換には賛成ですが、本人はいやがりそう(笑)
Jing-Fuさんのとこにもそのうちお邪魔しますね。
匿名 さんのコメント…
この映画の特徴としては、主人公側が不快な所ですね
イヤミ(とはいえ応対は普通)弁護士を×される辺りがスタート地点ですが、
表面的には謝るけど最後のオチで踏み止まるまで全く内面に変化がない
「ちっ、はんせいしてまーす」

同時期に見たハル・ベリー「チェイサー」も主婦が頑張る映画で、
序盤、何かモタモタしてるのを見てイラっと来たりはするんですが、
こっちは見た後「よかったなぁ」と思える映画で落差が大きかったです

>若い女性の運転する初代ヴィッツにピッタリくっつかれてしつこく煽られたことがあります。
ググってみたら「クライモリ」に出てきそうな細い道しかなかった
岩石入道 さんの投稿…

>2023年12月26日 22:13 の匿名さん

まあ大して反省してなくてもあれだけひどい目にあったんだから
もう不用意にクラクションは鳴らさないんではないでしょうか。
チェイサーはだいぶ前に観たのでうろ覚えですが主人公や子供に落ち度はなかったですからねえ。

>ググってみたら「クライモリ」に出てきそうな細い道しかなかった

捕まってたらひどい目に遭わされてたかもしれませんね。
という冗談はさておき、車も人もほとんど見当たらないので
変なのと遭遇さえしなければゆったりドライブを楽しめる場所ではありますよ。