「囚われた国家」 感想 自由を奪われたアメリカ

概要

原題:Captive State
製作:2019年アメリカ
発売:キノフィルムズ
監督:ルパート・ワイアット
出演:ジョン・グッドマン/アシュトン・サンダース/ジョナサン・メジャース/ヴェラ・ファーミガ

2027年、世界はエイリアンに侵略され、人類は強権的な支配下に置かれていた。9年前に両親をエイリアンに殺された青年ガブリエルはレジスタンス活動に参加していたが、シカゴ警察のマリガンに目を付けられていた。そんな中、レジスタンスによる爆弾テロ計画が進行していく。

予告編




感想


侵略にやってきたエイリアンと人類との戦いを描く…のではなく、既に人類が敗北・降伏し、エイリアンに圧政を敷かれている状態でのささやかなレジスタンス活動を描く。侵略SF的な派手さは全くない地味な映画なんですが、こういうのはわりと好きな方ですね。



その昔「メタルブラック」っていうシューティングゲームがありまして、これもエイリアンに地球を壊滅させられ政府も降伏した状態から主人公が単身で反旗を翻すという内容で、ゲームシステム的には大して面白くなかったんですが、崩壊し砂漠化した夕暮れの都市をバックに一人寂しく出撃する黄昏感が大好きでかなり熱中した記憶があります。本作もどことなくそれに通じる退廃的な雰囲気があって気に入りました。

まあ、本当はゲームじゃなくてナチに反抗したレジスタンス運動映画のようなのを引き合いに出すべきなんでしょうが、あいにく私はそういうのをほとんど観てないし、敵がエイリアンってことでメタルブラックを思い出したという話です。


ただ、本作はエイリアンに圧政を敷かれているとは言ったものの、エイリアンの姿はほとんど画面に出てこない。その数少ないエイリアン出演シーンを見ても、例によってまるで知性を感じない獣じみた凶暴なエイリアンなんですよね。これはちょっと不満かな。人類を支配下に置くほどの知能があるんだからもう少し理知的な雰囲気のエイリアンにすればいいのに、なんであんなモンスターみたいなやつにしてしまうのか。ウニみたいなトゲを生やすとかそういうディテールは個性的でしたが、そんなのこの際どうでもいいと思うんですよ。プレデターみたいな武装エイリアンも出てくるのでそっちには若干知性を感じないこともないですが、ただの兵士って感じだし。統治者の姿は一度も映らない。いや、爆破テロの時に映った奴は統治者だったのかな…


とはいえ、本作で主に描かれるのは体制側に与する人間とそれに反抗するレジスタンスとの戦いですから、統治者は別にエイリアンじゃなくても何でも良かった感じはします。通信を制限され、伝書鳩やら新聞広告などで連絡を取り合うレジスタンスを見ていると統治者を中国共産党に置き換えて観てもいいんじゃないかと思いました。もし米国が中共との覇権争いに敗れるようなことがあれば、あり得ない未来ではないでしょう。自由の国アメリカから自由を取ったら後に残るのは治安の悪さだけ。…と思ったけど表向き失業率と治安は改善していたらしい。まあ中共も表向きは良い数字を発表しますし。色々と。


レジスタンスがアナログな方法で連携し、爆破テロで統治者に一矢報いようとする過程のスリル、誰が体制側で誰がレジスタンス側なのかというスパイ映画的なサスペンスは非常に面白かったです。しかし、知性あるはずのエイリアンがその片鱗もほとんど見せず、エイリアンじゃなく別の何者かであってもあまり問題ないという造りはSF的にはもったいなかった。いやあえてそうしているのは分かるんですが、それでももっとSF要素が前面に出ていればという惜しさを感じた映画でした。

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