概要
原題:Mine 9製作:2019年アメリカ
発売:竹書房
監督:エディー・メンソール
出演:テリー・セルピコ /マーク・アシュワース/ドリュー・スターキー/ケビン・サイズモア
アパラチア鉱山の第9炭鉱、地下3000mでメタンガスの爆発事故が発生。炭鉱夫9名が生き埋めとなり、数名が死亡。その場はどうにか生き残った者たちも、押し寄せる地下水や残り少ない酸素に苦しめられ、やがて究極の判断を迫られる。
予告編
感想
アメリカの炭鉱労働者が事故で生き埋めになってしまう話。
10年ぐらい前にあったコピアポ鉱山落盤事故の映画化かと思ってよく見ずに借りてきましたが、全然別物でした。いや、別にパチモンとかではありませんが。
本作は製作費が推定35万ドルと恐ろしく低予算です。爆発、落盤時のCGにも隠しようのない安っぽさが漂ってます。尺も実質73分程度と非常に短め。
しかし、かなりメッセージ性は強い。
「悲惨な環境で、それでも働き続ける炭鉱夫がいかに気高く立派であるか」
を伝えるために作られた映画です。
これはかなりうまくいってるんじゃないかと思いますね。
私も最初は「炭鉱夫なんて死んでもやりたくない職業の一つだな」と思ってたのに、最後まで観たら「炭鉱夫になるのも悪くないかも…」ぐらいの気分になってましたからね。
ただ、現代でもああやって働く炭鉱夫たちがいるとはあまり考えたことがありませんでした。北海道もかつては石炭掘りで栄えた時代があったんですが、今はもう寂れ切っているわけです。特に夕張とか。私は時々そういう寂れた街を訪れては過去の栄華に思いを馳せるという趣味がありまして、つまり石炭掘りはもう完全に終わった産業だと認識していたんです。
しかし、少なくともアメリカではまだ終わっていないんですね。トランプ大統領の公約の一つには石炭産業の復活もありました。結局スルーされているっぽいですが。なんせ今じゃ石油産業ですらオワコン扱いされ始めてますし、今更石炭を復活させると言っても現実味に欠けますね。
炭鉱産業の衰退によって、ウェストバージニア州は全米で最も貧しい州になってしまったと聞きます。本作によると、今でも炭鉱労働者は週に6~7日出勤でほぼ休みは無く、労働時間も一日10~15時間はあるとか。地上へ出ても太陽を浴びる暇もほとんどなく2時間だけ家族と過ごし、あとは睡眠で終わる。そんな暮らしのようです。
それだけでも地獄のような生活に見えますが、本作で発生する落盤事故はさらに恐ろしく絶望的なシチュエーションです。地下3000mの深さ、坑道の狭さ、酸素の少なさ。どこを見ても助かりそうにない。
地下に閉じ込められたうえ人喰い地底人が襲ってくる「ディセント」よりもさらに深い絶望を感じた映画かもしれません。
最後にやってくる「究極の選択」はさすがにちょっと作為的すぎるかなとも思いましたが、炭鉱夫の生き様が心に刺さる良い映画でした。
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