「フィードバック」 感想(ネタバレあり) それでも私は関係ない、と言い張る理由

概要

原題:FEED BACK
製作:2019年スペイン・アメリカ
発売:クロックワークス
監督:ペドロ・C・アロンソ
出演:エディ・マーサン/ポール・アンダーソン/イバナ・バケロ/リチャード・ブレイク

ジャービスはロンドンの深夜ラジオ「残酷な真実」のメインパーソナリティ。過激な物言いで物議を呼び、脅迫事件を起こされるほどだった。ある日、放送直前の現場に武装した男2人が乗り込んでくる。彼らはスタッフを人質に取り、ジャービスに過去の秘密を話すよう要求するが…

予告編




感想


深夜ラジオの放送現場を武装した2人組が占拠。
彼らの目的はパーソナリティのジャービスとアンドリューに「2011年11月のベルファストで起きた事件のことを告白せよ」というものだった。


筋書きとしては非常にシンプルなスリラーのように見えます。
ラジオ番組のパーソナリティが過去に関わった陰惨な事件。それは表沙汰にはならなかったが、被害者はずっと苦しんでいた。その恨みを晴らすため、真相を告白させるためにラジオ局を占拠した武装グループ。あとはジャービスが本当にやったのか、やっていないのか。ただそれだけの話。

…だと思ったんですが、オチが全くもって腑に落ちない。
そもそもなぜ舞台がラジオ局である必要があったのか?
ただ単に、異常に良心が欠如した男のサクセスストーリーだったのか?
「フィードバック」というタイトルの意味を考えると、そうは思えない。

ラジオ番組における「フィードバック」とは、当然ながらリスナーからの反応・意見・評価という意味でしょう。

ジャービスとアンドリューがあのような目に遭ったのも広い意味でのフィードバック、つまり因果応報であることに違いないんですが、ラジオ番組とは直接関係はない。有名人という立場を悪用した形とはいえ、ラジオ局である必要はない。まあ、犯人はジャービスたちの罪をラジオで発信させて償わせようと思っているわけですが。それはいいんですが。


ジャービスがやっているラジオ番組の名前は「残酷な真実」。それは過激な言論で賛否を呼び、ジャービス自身もアンチに拉致事件を起こされたばかり。スタッフは怖がってやめたがるし、番組の評価も下がっている。これが第一のフィードバック。

そんな情勢の中、今度は武装グループに現場を占拠されるという致命的な事件を起こされてしまった。これをうまく処理できなければ、ジャービスに未来はない。


そして主題のフィードバックとは、ジャービスがこの事件を逆に利用して番組と自分の名声を高めることだったのではないでしょうか。ジャービスがあれほど真相告白をギリギリまで渋ったのも、単なる保身ではない。むしろ言えば命は助かりそうだった。保身以上の計算があったのだと思います。

その目論みが上手くいかないと、このタイトルである意味がなくなる。
別にジャービスが破滅しても負のフィードバックってことにはなるかもしれんけど、それはラジオ番組のフィードバックではない。
負を正に変えてしまうジャービスのしたたかさが見どころなわけです。
リスナーの存在を忘れてはいけない。
ジャービスの勝利は予定調和的だったとさえ言えるでしょう。
しかしあまりにパーフェクトな大勝利だと、非常に胸糞が悪くなってしまう。

だからこその、娘の存在です。
「いずれ彼が本当の報いを受ける時が来るのだ」
あの意味深なラストシーンはそういうことじゃないかな、と思います。


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